第325話 消し去ってやりますっ!

 感情の高まりのままに封じ込めていたエネルギーを解放する。

 解き放った魔力に大気が、空間が悲鳴を上げ、空気が電解して白い紫電が走る。


 ヴィスデロビアは僕と、ついでにネルヴィア様の事を……よ、幼女と!!

 さらには幼稚園なんて……奴は禁忌を犯した!


 神の戦いは静かに始まる? そんなの知った事じゃありません! 絶対に許しません!

 よくもこんな大勢の前でこれ程の辱めを!! 一片の塵すら残さず、魂もろとも消滅させてやりますっ!!


「クックック、そんなに怒るなんて図星だったかな?」


「煩いですよ! そんな椅子に座って気取っちゃって!!

 ぶっちゃけ、そんなゴテゴテした真っ黒な椅子なんてダサいですからね?

 頬杖ついてニヤニヤ笑って……キモいです。

 可哀想に……いい歳して中二病ですか??」


 本当に何でしょうかあの椅子は。

 真っ黒で尚且つ豪奢……確かにカッコいい。

 ですが、実際にこんな真剣な戦場でアレに座るのはちょっと無いですね。

 しかも、かの座り方!


「中二病でナルシストのくせにっ!!」


「ルーミエルよ、よくぞ言った!!

 その通りじゃ、奴は中二病でナルシストの痛い奴なのじゃ!!」


 うんうん、もっと言ってやって下さい!!

 こんな大勢の前でバカにされたんです。

 ヴィスデロビアも恥ずかしい思いをするべきですっ!!


「ヴィスデロビアが超越者になったばかりの生意気な小僧だった頃の事じゃ。

 かなり調子に乗っていてな、私こそが神々の王に相応しいとかほざきおってな。

 ぷぷぷ……学園の教員にボコられておったわ!!」


「うわぁ、それは恥ずかしいですねぇ!」


 ふっふっふ! 僕達と同様に配下達の前で恥をかくがいい!!


「はっはっは、懐かしいね。

 あの頃の私はまだまだ若かった……しかし、見た目相応の幼稚で程度の低い行為。

 クックック、可愛らしい幼女達だ」


「むぅ、中二病ナルシストの痛いヤツのくせにっ!!」


「今までの愚行もだが……貴様の行いは万死に値するぞ!!」


 ネルヴィア様もやる気ですし。

 もう殺っちゃいましょう。

 消し炭にして、存在そのものを消し去ってやりますっ!!


「とりあえず……いつまでその趣味の悪い椅子に座っているつもりですか?」


 ノーモーションで容赦無く滅砲をぶっ放す!

 直径十数メートルの光が一瞬でヴィスデロビア諸共、その周囲を飲み込み……


「いきなり危ないじゃないか」


 当然の様に防いでくれますね。

 けどまぁ、神能すら乗せてないソレはただの目眩しですけどね。


「塵と化せ」


 余裕の面持ちで足を組み、頬杖をつくヴィスデロビアの頭上に現れる積層魔法陣。


「滅柱」


 一瞬にして半径数十メートルもの白き光の柱が地上に降り注ぐ。


「フッ、芸の無い幼女だ」


 ヴィスデロビアの頭上に展開される漆黒の壁。

 確かハスルートとかが使っていたやつですね。

 確かにさっきの滅砲は簡単に受け止められて、その強度はハスルートとは比べ物になりませんけど……


「僕の滅光は神をも消し去る」


 〝ピシッ〟


「っ!」


 ヴィスデロビアが目を見開き、頭上を見上げた瞬間……音すらなく漆黒の盾が消滅し、滅柱が地を穿つ。


「なかなかやりますね」


 漆黒の盾が消滅し、滅柱が降り注ぐほんの刹那の一瞬。

 たったそれだけの時間でヴィスデロビア含め、滅柱の範囲内いた側近達全てが無傷で離脱するとは……


「けどまぁ」


 グッと手を握り締め、滅柱を収束。

 後に残るのは直径数十メートルの穴と、その中心に浮かぶ白球のみ。


「あの椅子を消し去れたので良しとしましょう!」


 ついでにヴィスデロビアも強制的に立たせる事ができましたし。

 プライドの高い中二病ナルシストであるヴィスデロビアにとっては……ふっふっふ! さぞかし屈辱でしょうねっ!!

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