第204話 4人の関係 その1

 ナイトメア本部にある応接室。

 煌びやかでは無いが、品の良い調度品が置かれ、落ち着いた雰囲気の一室。


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ?」


 そんな応接室のソファーに腰掛け縮こまる2人。

 ハールトさんは普通に緊張した様子で、リリアーナさんは俯いて体を小さくしています。


 まぁでも2人が緊張するのも当然ですか。

 ハールトさんは先程の演説での僕の魔力を感じて、リリアーナさんにはそれ以前の事情がありますからね。


 コンコン


 地味に気まずくなって来た所で扉がノックされて2人の少女が姿を表す。


「「失礼致します」」


 流石は双子。

 リーナとミーナは息ピッタリですね!!


「さてと、これで全員が揃いましたね」


 現在この部屋に居るのは、僕を合わせて8人。

 元最高幹部の2人にリーナとミーナ。

 オルグイユにメルヴィー、そして先程からずっと頭を撫でて来るフェル。


 コレール達は現在、魔境団の拠点殲滅作戦の指揮にあたっています。

 よって従属を持たないフェルがこうして僕の護衛と言う名目で抜擢されたのですが……何とも言えませんね。


「2人ともこっちに来て座って下さい」


「「承知致しました」」


 揃って答える2人を微笑ましげに見つめるオルグイユとメルヴィー。

 2人の成長に感無量です。

 この短時間でこの2人を立派な専属メイドに仕上げたメルヴィーの教育も凄まじいですけど。


「メルヴィーもですよ!」


「ふふふ、承知致しました。

 では2人とも、お飲み物とお菓子の用意を」


 メルヴィーの指示に頷き、人数分のお茶を要してから席に着きました。


「こほん、リーナとミーナも含め、リリアーナさんとハールトさんは何故ここに呼ばれたのか不思議に思っている事でしょう」


 少し芝居掛かった僕の言動にリーナとミーナが苦笑いを浮かべる。

 今日はいつもの様な思い付きじゃ無くて、重要な話なのに……

 緊張した様子で真剣な面持ちなリリアーナさんとハールトさんを見習って欲しいですね!


「まず初めに、リリアーナさん。

 貴女は吸血鬼ですよね?」


 その言葉にリリアーナさんの方がビクッと揺れた。

 図星ですね、まぁステータスを覗いたので初めから知っていましたが。

 僕にステータスの改竄など通用しないのですっ!!


 ハールトさんは驚愕に目を見開いてリリアーナさんを凝視する。

 まぁ、魔教団の最高幹部が吸血鬼とカミングアウトされたらこうなりますよね。


「そ、その通りです。

 私の本当の種族は貴種吸血鬼です」


 これこそが、リリアーナさんが異常に怯えていた理由。

 何せ、今もそうですが、あの場所には始祖と原種が……オルグイユとメルヴィーがいましたからね。


 そんな吸血鬼の頂点に立つ2人に加え、2人と同格の存在が複数いる組織と対立したのです。

 あの怯えようも頷けます。


「因みに、リリアーナさんはリーナとミーナと同じ公爵位ですよ」


「「「えっ?」」」


 3人の声が重なりました。

 ふふふ、ちょっと面白いですね。


「リリアーナもオルグイユとメルヴィーが上位の吸血鬼という事は分かっていると思いますが。

 オルグイユは始祖吸血鬼、メルヴィーは原種吸血鬼の帝位です」


「フフフ、ルーミエル様の眷属の1人、オルグイユです。

 以後、宜しくお願いします」


「同じくルーミエル様の眷属の1人で、メルヴィーと申します」


 ペコリと頭を下げる2人にリリアーナさんは放心状態ですね。

 とは言え、これはリーナとミーナにも関わる真面目な話。

 あまり面白がってもいられません。


「さて、顔合わせも終わったので、そろそろ真面目な話に入りましょうか。

 実はリーナとミーナの2人とリリアーナさん、ハールトさんには重大な関係があります」

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