第173話 思惑通りです!!
「イヴァル王が言った通り、僕が提示したあの条件の本命は勇者達の人気維持です。
そしてコレが、その成果です!!」
僕達が今いるのは、ネルウァクス帝国から転移してアレサレム王国王都の遥か上空。
王城の真上から王都の光景を眺めている訳ですけど……試作した空飛ぶ絨毯! ふふふ、テンションがヤバいですっ!!
「さぁ、とくとご覧あれ」
王城の前に集まるのは王都にする多くの住民、そしてその前に立つのはアレサレム王国が誇る勇者達。
「なるほど…こうなる事まで見越してのあの条件をですか……」
「だから、フェル様が仰った計画通り、という訳ですか」
「ふふん! その通りです!!」
何せこの状況です。
住民達がパニックに陥っても可笑しく無い事態なのに、勇者と言うプロパガンダのお陰で大した騒ぎも起きて無い。
我ながら素晴らしい効果です!
「それにしても壮観ですね……」
「ええ、本当に壮観ですね……」
苦笑いを浮かべるユリウスとアスティーナ。
「ユリウス、アスティーナも……せっかく私達が見て見ぬふりをしていたと言うのに……」
そんな2人を恨みがましい目で睨むウェスル帝。
一体どうしたのでしょう?
はっ! もしや僕は今、社会の上下関係の闇を目撃しているんじゃ……コレが理不尽な上司の怒りと言うやつですね!!
コレは非常にマズイです。
と、友達3人が喧嘩して流血沙汰なんてシャレになりません!
僕がどうにかしなければっ!!
「ほら! そんな事よりもアレを見て下さい!!」
指の先には王都の外に陣取る夥しい数の敵の姿。
少なくとも10万は下らない大軍、これで3人の意識もあの魔教団の軍勢に向かうはずです。
「魔教団の作戦は王都に数十万の軍勢を転移させて王都を落とし、一気に深淵の試練を攻略すると言うものです。
しかし! 僕が王都全体を包み込む様に展開させた結界によって弾かれた、と言う訳です」
戦争が終わって1週間。
既に王都を包囲していた対魔教団同盟の同盟軍は転移によって帰ってますからね。
あの結界を展開していなかったら、今頃王都は圧倒的な物量のもと、陥落していたでしょう。
「フフフ、これ程広の範囲結界を容易く張ってしまわれるなんて流石です」
「え? もしかしてこれって凄いんですか?
アスティーナ達も出来ると思っていたんですけど……」
「確かにこの規模の結界でも、展開する事自体は可能でしょう。
しかし、これ程強力なものを展開する事はできません」
マジですか!
この程度であれば勇者達ですら展開できると思ってたんですけど……ヴァル王やウェスル帝、十剣の皆んなと常識について勉強したハズなのに。
「で、でも、あの結界もそんなに強力なものじゃありませんよ?
滅光結界じゃありませんし……」
「フフフ、それだけルーミエル様は驚くほどに凄い御方と言う事です」
「そ、そうですか?
じゃあ、もっと凄い事を見せてあげますっ!」
ちょうど王都の人々も勇者達に注目してますし、頃合いでしょう。
こちらも作戦通り行くとしましょう。
「いきますよ! 〝創世ノ神〟と〝魔導ノ王〟の並列起動です!!」
やる事は世界樹の時と同じ。
時空間支配によって王都全域を掌握し……
「お、王都が…消えた……」
「いえ、一瞬だけ感じ取れたこの膨大な魔力、これは……」
「まさか、アレサレム王国の王都を丸ごと転移させた?」
ウェスル帝の言葉を訂正する様に唖然と呟くユリウスとアスティーナ。
イヴァル王も間抜けな顔になってますし、相当驚いてもらえた様ですね。
「その通りです。
別に消えた訳じゃありませんよ。
転移魔法によって転移させる、以前話した世界樹の時にとった方法と同じです」
まぁ転移先は僕が作り上げた世界では無く、深淵の試練の深層ですけど。
「話には聞いていましたが……まさか王都を丸々転移させるとは」
「しかし、何故態々そんな事をなさったのですか?」
「態々、向こうから攻めて来てくれるのです。
迷宮内に迎え入れて殲滅した方が効率的ですし、逃走される心配もありませんからね。
そっちの方が楽だと思いませんか?」
まったく、ウェスル帝もイヴァル王も分かりきった事を……
まぁ尤も、魔教団の最高幹部達はまた違った風に解釈してくれるでしょうけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます