第172話 スイーツ天国ですっ!!
対魔教団同盟とアレサレム王国との一日戦争が終結して1週間。
「おぉっっ!!」
僕の目の前には理想郷が広がっていました……おふざけ無しで、ガチで素晴らしいです!
この光り輝く様なスイーツの山っ!!
うん、絶景かな。
「ムフフ……ケーキがいっぱい! タルトがいっぱい! スイーツ天国ですっ!!」
もうさっきからニヤニヤが治まりません。
テンションが可笑しくなりそうです!
「ん、
フェルが無気力ながらも目を輝かせています……スイーツの魅力はまさしく魔性ですっ!
しかしフェルさん、その言い方は……
「ハハハ、容赦無いですね」
「先程、厨房でシェフが泣き崩れていました」
ほら、ウェスル帝とイヴァル王が小声でコソコソと何やら言ってますよ。
尤も、常人じゃない僕達全員が聞き取れていますし、確かに些か失礼だと思いますが……まぁ仕方ありませんね。
だって事実ですし。
ぶっちゃけ、スイーツの前に振る舞われたフルコースはそれなり程度の味でした。
確かにこの世界基準で言えば最高峰でしょう。
しかし! 地球の調理技術、料理理論、豊富な調味料に厳選された食材の数々。
僕達ナイトメアには遠く及びません!!
しかしシェフには悪い事をしてしまいましたね。
自身に満ちた顔で僕達に挨拶に来た料理長を含めたシェフ数名。
僕達の素直な感想を聞いて、燃え尽きた様に真っ白になってましたし。
ふふっ、可哀想ですけど、アレはちょっと面白かったですね。
「さぁ! バームクーヘンにパフェ、クレープ、シュークリーム!
どんどん持ってきて下さい!!」
「す、既に文官も半数を動員しているのですが……」
確かに頬を引き攣らせてるウェスル帝の言う通り、未だにアレサレムの戦後処理で忙しいでしょう。
しかし! そんな事は知った事じゃありません!!
大事なのはスイーツなのです。
「僕のスイーツを作る為に、書類仕事や会議なんて後回しにして馬車馬の様に働いて下さい!!」
「ふふふ、恨むなら『好きなだけ』なんて事を口走った自身を恨む事ですね」
「お嬢様の事を食べ物で釣って、良い様に使おうなどとするからこうなるのです。
自業自得ですね」
とっても楽しそうなオルグイユに、いつに無く辛辣なメルヴィー。
そんな2人の前にもお皿に乗ったケーキの姿が。
一見、一切れしか無い様に見えますが、僕の目は騙されません。
巧妙に隠してますけど、アレはかなりの量を食べてますね……
「あ、あはは……し、しかし、本当に彼を助けてしまってよろしかったのですか?」
おっと、話題を変えてきましたね。
まぁ確かに、あのまま吸血鬼2人と対峙しても分が悪いでしょうからね……
果たしてこの2人に口論で勝てる人が何人居るのやら。
「別に問題ありません。
勇者達を含めあの場に居合わせた人達には情報を漏らさない様に契約魔法で縛りましたし。
条件も呑んでもらいましたしね」
「条件……確か、一般市民が混乱しない様に王国中を回って今回の説明及び同盟によるアレサレム王国再建に於ける手助け、でしか」
「はい。
それと、ナイトメアの噂をさり気なく流す事ですね。
人の口に戸は立てられぬって言いますからね、契約魔法で縛っていてもいつかは情報は漏れます。
なら、今の内にある程度の方向性を持たせて噂を流す方がいい」
全く何も分からない圧倒的な武力を持つ組織なんて、まず受け入れられないでしょうからね。
「お陰で、大した混乱もなくアレサレム王国は対魔教団同盟の統治下に置く事ができましたし。
ナイトメアについても恐怖では無く憧れと畏怖を抱かせる事ができました」
一般市民は大国をも従え悪と対峙するナイトメアに憧れと畏怖の念を抱き。
悪行を働く貴族達は恐怖を感じて肝を冷やす。
少しは治安も良くなるでしょう。
「それに、国王に騙され、利用されていたにも関わらず王国の為に奔走する勇者達ですからね。
勇者の人気はうなぎ登りです」
「ん、狙い通り。
流石、エル、偉い偉い」
そう言って頭を撫でてくるフェル。
最近、何かとフェルに撫でられてる気がしますね……別に良いですけど。
「つまり、本命は戦争で大敗した勇者達の人気を保つ事だったと?」
流石はイヴァル王、察しがいいですね。
まぁ、ナイトメアの件も本命である事には変わりありませんけど。
「本当に貴女様は……」
イヴァル王に軽く笑みを浮かべて答えると、イヴァル王も楽しげに笑みを浮かべる。
楽しそうで何より、これで食糧庫を空にしちゃった事も笑って許してくれたら良いのですが……尤も、その事について文句を言う暇はありませんけど。
「では、行くとしましょうか」
このスイーツはちょっと惜しいですけど……仕方ありませんね。
後でお持ち帰りさせて頂きましょう。
「魔教団が動きました」
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