第11章 深淵の試練攻防戦編

第169話 計画通りです!!

「これは……」


 アレサレム王国の王都から数キロのとある丘の上。

 広大なアレサレム王国王都を一望できる丘にて黒髪の少年がポツリと呟く。


「押さえ込まれた……いや、これは消滅……ん〜あの場にいた者達にはどうしようもないと思ったんだけどなぁ」


 外見は10歳程度の少年は日常と変わらない王都の様子を眺めて首を傾げる。


「いやぁー、やっぱり人間って面白い!

 でも確実に殺せると思ったんだけどなぁ、どうやったんだろう?

 ルナン君、キミ何か知ってる?」


 そう言って少年が見下す視線の先には、手足を縛られて無様に地面に転がる初老の男性。

 中肉中背、特段太ってはいないが筋肉質とも言えないアレサレム王国国王ルナン・サナスト・アレサレムは少年の視線を受けて体を強張らせる。


「い、いえ、私は何も……」


「う〜ん、まぁ別にいいや。

 邪魔なら殺せば良いだけだしね。

 それにしても、ディベルが音信不通だって言うのに、キミまで失敗っちゃうなんて。

 はぁ、情けなくて泣けて来ちゃうよ」


「も、申し訳ありません」


「うん、本当にね。

 でもまぁ、キミは運がいいよっ! 実はね深淵の試練の攻略に本腰を入れる事が決まったんだよ」


「本当ですかっ!?」


「本当だよ。

 キミが中々攻略してくれないから、魔教団でやる事になったって訳さ。

 って、冗談だよ? でもキミには期待してるんだから、頑張ってね」


「勿論です。

 あの様なクズどもに唆された者達の魂を我らが神への供物としてご覧に入れましょう!!」


 地面に転がりながらも憎悪の籠もった眼差しで王都を睨みつけるルナンを見て少年はニヤリと口角を吊り上げる。


「じゃあ、行こうか。

 そんなキミに素晴らしい力を授けよう!!」


 次の瞬間には、少年とルナンの姿は掻き消えていた。





 *





「しかし、よろしかったのですか?」


 青くなって震える第一王子と宰相さんに、口汚く喚き散らす第一王女がフェーニルの騎士達に引き摺られて行った後。

 貴族達が状況の変化を呑み込む為に一度休憩を取った方がいいと言う事で、控室にやって来てイヴァル王が開口一番。

 神妙な面持ちでそう聞いて来ました。


「? 何がですか?」


 あっ、もしかしてちょっとだけムキになって、公の場に出てしまった事でしょうか?

 いや、まぁムキになんてなってませんけど!


「でも、それなら大丈夫です。

 勇者達と同様に余計な事を話せない様に契約魔法で縛りましたからね。

 ふふん、僕レベルになると相手の承諾無しに、気づかれる事すらなく契約魔法をかけることができるのですっ!!」


 ふっふっふ! 僕の凄さにさぞかし皆んな驚いている事でしょう?

 あれ? おかしいですね、何故皆んなして呆れた様な顔を……


「いえ、まぁそれもなのですが、そうでは無くてですね」


「ルナンの事ですよ、逃してしまって良かったのですか?」


 はぁ全く、と呆れた様にため息をつくウェスル帝。

 できる女である僕に対して……屈辱です! これはウェスル帝から僕はの挑戦状と言っても過言ではない!!


「し、失礼ですね、当然わかっていましたよ!

 ちょっと冗談を言っただけです」


「そうですか」


「そうなのです!!

 それに、ルナン王に逃げられるのは当初の予定通りなので何の問題も無いのです!

 ねっ、コレール!!」


「はい、ルナンは魔教団を誘き寄せるための餌。

 奴らの足取りは追えております」


 ふふん! どうです!!

 僕の計画に狂いは無いのです!!


「ルナンには2つの仕掛けがしてあります。

 まずは僕の魔力で組んだ追跡用のマーキング、まぁこっちはすぐに解除されてしまいましたが。

 もう一つはナイトメアが開発した魔導式発信器です!!」


 そもそも、仮にその2つが解除されてしまっても何の問題もありません。

 僕達が感知できる空間の繋がりを作った時点で、僕達から逃げ果せる結末は無くなったのですから。


「ふっふっふ! 敵もバカですよね、この僕から逃げ切れる訳無いのに」


「まぁ、それは……ね?」


「ええ、魔教団もこんな規格外が相手なんて想定外でしょうからね」


 何故かまたウェスル帝とイヴァル王に呆れた様な視線を向けられました、解せぬ……

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