第126話 特別ステージです!
「かなりの高度の筈ですが……流石は世界樹ですね」
今現在、僕たちはエルフの国・エルラシル聖国の上空にいます。
それも、常人ではまず目視することの出来ない超高空。
真下にあるエルラシル聖国の建物が豆粒の様に見えます。
しかし、こんな高さであって漸くてっぺんを見る事ができる世界樹……ちょっとデカすぎませんか?
「はっ!!」
「お嬢様、如何なされましたか?」
「ルーミエル様?」
雷に打たれた様に硬直した僕にコレールとオルグイユがいち早く声をかけてきました。
しかし、今はそれに答える余裕がありません。
僕は気づいてしまったのです!!
「ん、エル、吾も同じ、気持ち」
先程まで眠たそうに目を擦っていたのに、今となってはいつに無く真剣な面持ちのフェル。
僕と同じ、この境地に至るとは……流石ですね。
互いに頷き合う僕とフェルを、他の皆んなが困惑顔で見てきます。
が、メルヴィーとコレールだけはちょっとだけ呆れた様な苦笑いを浮かべてますね。
「お嬢もフェルもどうかしたのか?」
すると、リュグズールが心配そうな面持ちでそう聞いてきました。
聞かれてしまっては仕方ありません。
「リュグズールはこの光景を見て何も気づきませんか?」
「ん? まぁ変なところはねぇと思うけど?」
「何を言うのです!!
今は夜なので分かりづらいですが、あの緑の生い茂った世界樹、そしてそこに降り注ぐであろう温かな太陽の光!
つまり、この世界でもトップクラスに位置する最上級のお昼寝スポットと言う事ですっ!!」
しかもです。
これほどの高度ならば、運が良ければ一面の雲海を拝む事も可能かもしれません。
「ん、こんな場所が、あったとは。
吾も、知らなかった」
長年のお昼寝ストとして、あの様な絶好のスポットを知らなかったフェルの悔しさは想像に難くありません。
「フェル……大丈夫です。
これから、いっぱいあの場所でお昼寝しましょう!」
そんな僕達のやり取りを、何故か全員が呆れた様な、どこか生暖かい視線で見ていました。
「そうとなれば、世界樹は確実に確保しなければなりませんね」
もうこの際です。
世界樹こと、八大迷宮・大地の試練は魔教団から貰い受けることにしましょう。
場所がエルラシル聖国の中央なので、封印を解くだけにしようと思っていましたが。
お昼寝の魅力には、例え超越者に至り、神となっても誰も逆らえません。
「と言う訳で、挨拶代わりの一撃の前に世界樹を保護しておいてっと。
あっ、ついでに彼らの逃げ道も塞ぐとしましょう」
一度指をパチンと鳴らすと、一瞬にして周囲の光景が切り替わる。
空に満天の星空は無く、地面にエルラシル聖国の姿も無い。
あるのは常に雷が鳴り響く曇天に、何処までも続く草一つ存在しない荒野のみ。
まさしく終焉の世界って感じですね。
「これは……」
「はい。
彼らの為に、特別ステージを作ってあげました」
ここは僕が作り上げた一つの世界。
僕の神能の1つである〝創世ノ神〟の権能で作り上げた特別ステージです。
そしてこの世界全体に〝殲滅ノ神〟によって滅光結界が多重に施されており。
脱出は愚か、大神達ですら侵入する事も難しい、まさに鳥籠。
この世界にいるのは僕達と、結界で覆って転移させた世界樹の中にいる者達だけ。
まぁ、この決戦のためだけに作った世界なので、現生生物を造る必要はありませんからね。
「そして、僕の神能〝創世ノ神〟は僕が作り上げた世界の時空間を支配する。
つまり、世界樹がこの世界にある限り、例え消滅したとしても元どおりにする事が可能と言う訳です」
「いや、まぁ聞いてはいたけどさ……お嬢、凄すぎだろっ!?」
僕の説明を聞いて突然大声を上げたリュグズールに皆んなが頷いて同意を示しています。
オルグイユやエンヴィーでは無く、リュグズールが此処まで大声をあげるとは……ちょっとビックリしてしまいました。
「ん、エル、凄い」
フェルもそう言って頭を撫でて来ますし。
やっぱり、僕が作り上げたこの必殺技『
数万って数の魔物も、こうやって創り上げた小規模世界に隔離し。
その世界を消滅される事で、世界もろとも全滅させました。
脱出不可能な世界ごと殺す、まさに一撃必殺の必殺技です!!
「ふふん!
では、挨拶代わりの一撃と行きましょうか!!」
ここは派手にいきましょう。
最悪、世界樹が倒壊したりしても、復元できますからね。
「星天魔法。
落ちろ、メテオ!!」
皆んなに褒められて気を良くした僕の放った一撃は、不壊である筈の迷宮である世界樹の幹を大きく抉り取りました。
「……」
ちょっと、やっちゃった感が否めませんが。
大丈夫です! 事前にあの場所に抉れた場所に生命反応がない事は確認済みです!!
尤も、ちょっとギリギリでしたけどね。
あの近くにいたのは1人だけだったみたいですし。
もしかして捕まっている、吸血鬼だったりしませんよね?
もしそうなら、後で謝らないとですね。
「これは、一体?」
あっ、どうやらその必要は無さそうですね。
「こんな早々に見つかるとは……まぁ、取り敢えず、挨拶に行きましょうか」
未だに僕達のことに気づいていないディベルに向かって、翼をはためかせました。
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