第102話 洗ってあげます!
「す、素晴らしいですっ!!」
目の前に広がる光景に思わず叫んでしまいました。
しかし、それも仕方のない事、不可抗力です!
この光景を目にすれば、それこそ何処ぞの王族でも同じ様な反応を見せてくれる事でしょう。
アルテットの首都に建てたホテルはただのホテルではありません。
プールにカジノ、スポーツができる設備に加え天然温泉をも完備する総合レジャー施設!!
特に力を入れているのはアルテットの中心に聳える火山の地熱を利用した天然温泉で。
独自の源泉を探し出し、地球の技術に魔法を当て嵌めて常に循環させているので、お湯は清潔。
更には、火山にある火炎の試練から漏れ出した神聖な魔力を多分に含んだお湯の効能は最早魔法の域に達しています。
そして今、目の前に広がっているのは……
露天風呂、岩盤浴にサウナ、ジェットバスなど、思いつく限りが完備された大浴場!!
「ルーミエル様にお気に召して頂けたようで良かったです」
「えぇ、皆さんにも伝えて差し上げなければなりませんね」
「そうですね。
きっと、今夜は宴会になりますね」
と、それぞれオルグイユ、アヴァリス、メルヴィーの言葉ですが。
如何やら、今日は宴会がある様ですね!
宴会となれば……ふっふっふ、コレールの目を盗んでお酒を飲めそうです。
楽しみです!!
「う〜ん、どれから入りましょうか?」
これだけ広く、種類が多いと迷ってしまいますね。
ここはやっぱり、無難に露天風呂から行きましょうか?
「お嬢様、その前に御髪とお身体を洗わなければなりませんよ?」
「そ、そうでした……」
まさか、ここまで来てお預けを喰らう事になるとは。
う〜…でも仕方ありませんね。
「では、参りましょう。
本日は私が御髪を洗わせて頂きます」
「わかりました。
よろしくお願いします、メルヴィー」
シャワーの前にあるバスチェアーに座ると、シュバッと擬音語がつく勢いでメルヴィーが僕の背後に陣取りました。
因みにメルヴィーが、今日はと言ったのは、僕の髪を洗うのが日替わりだからです。
最初は自分でやろうとしていたのですが、とても悲しげな目をされてしまうので諦めました。
まぁ、僕としてもこの長い髪の毛を自分で洗うのは面倒なので有り難いのですが。
こうやって洗って貰っていると存外暇なんですよね……
「そうだ!
ノア、シア元の姿に戻って欲しいのですが、いいでしょうか?」
「勿論ですよ!」
「私も構いませんが。
何をするのですか?」
「僕も2人を洗ってあげようと思って……本当ならそのまま洗ってあげたいのですが、僕では届かないので」
悲しい事に、僕の身長では獣化していない時の2人の髪を洗うのは物理的に厳しいのです。
届きはするのですが、洗うとなれば、多分出来そうにないです。
「お嬢様が洗って下さるのですか!?」
「はい、いつも皆んなにはお世話になっているので。
勿論、2人がいいのならですけど」
「「よろしくお願いします!」」
さ、流石は双子ですね。
息ピッタリです!
でも、いつも落ち着いているノアまでもがここまで喜んでくれるとは……
「あれ?どうかしましたか、メルヴィー?」
白狐の姿になった、もふもふな2人の毛並みを洗っていると、メルヴィーが僕の後ろに立ったまま硬直していました。
「はっ!
い、いえ、大丈夫です、はい!」
「本当に大丈夫ですか?」
いつもコレールと双璧をなす完璧メイドのメルヴィーがここまで取り乱すなんて……心配です。
何か、メルヴィーにしてあげれる事は……
「あ!
じゃあ、僕が終わったら、次は僕がメルヴィーの髪を洗ってあげます!」
「えっ?」
「嫌、ですか?」
ここで嫌って言われたら数ヶ月は軽く引き篭もる自信があります。
と言うか、多分立ち直れませんよ。
「い、いえ!滅相もありません!!
喜んでお受けいたします!」
「はい!」
断られなくて安心しました。
メルヴィーも嫌がっては無さそうです、多分。
頬が緩みきっているので、そのはずです!!
そこからの、メルヴィーの動きはかつて無い程のスピードを誇りました。
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