第4章 神聖の試練編

第41話 発見です!!

 う〜ん、この違和感は一体何なのでしょうか?

 何と言うか……悪い感じでは無いんですよね。

 けど逆に、良い感じなのかと言えばそうでも無いですし。


 にも関わらず何故か、惹きつけられるこよ感じ。

 う〜ん、取り敢えず見て回る事にしましょう! そうしないと何も分から無い訳ですしね。


「お嬢様、お待ち下さい」


 意気揚々と足を踏み出した僕をコレールが呼び止めました。

 そして差し出されは手……? これはどう言う意味でしょうか?


「この先は何があるか分かりません。

 もしもの時は、私がこの身に変えましてもお嬢様をオルグイユとフェルの元へ転移させて頂きます」


 確かに緊急避難方としては転移に勝る方法は無い。

 僕は未だに転移は使え無いので、コレールに頼る事になってしまいますね。


 コレールの転移魔法の発動速度は凄まじく速い。

 それに触れていない存在も転移させる事が出来ますが、触れていたらより速い。


 常人では認識出来ない違いですけど。

 この世界には常人の域を出た存在が多数いますからね。


 慢心を抱き、油断した者から死んで行く。

 それは迷宮の中でも外でも変わら無いでしょうし、警戒するに越した事は無いでしょう。


 コレールに一度頷き、差し出された手を握る。


「ふふふ、では行きましょうか」


「ええ、お願いします」


 何故か微笑ましげに笑みを浮かべた職員さんにコレールが応え、僕達は屋敷の中に足を踏み入れました。


 まず出迎えてくれたのは、左右に広がる見事な庭園。

 放棄されてから月日が経っているせいか、少し荒れてますけど。

 それでも、少し手入れをすれば美しい事を予感させます


 左右を庭園に挟まれた道の先には、建つ大きなお屋敷。

 あれ程の広さがあれば、従業員さん達の居住場所としても十分ですね。


 中央広場から少し距離があるとは言え大通りに面した商業地区であり、貴族街に近い一等地。

 そんな場所にこれだけの敷地面積を誇る屋敷を建てるとは……う〜ん、流石は貴族ですね。


 しかし、そんな庭園を見て美しい姿を想像する余裕は僕にはありません。


 それもそのはず。

 少女……いえ、この際認めましょう。

 幼女と言っても過言では無い僕は、当然身長も低いのです!!


 身長が低いと言う事は、勿論歩幅も狭いと言う事に他なりません。

 そして僕の歩幅とコレールと職員さんの歩幅では比べるまでも無く僕の方が狭い。


 よって、必然的にコレール達のペースについて行こうとすれば、駆け足気味になると言う訳です。


 しかし、手を繋いでいるから、ペースを落とす事が出来ませんし……ちょっと辛い……

 と思ったら、コレールが歩くペースを落として僕の歩幅に合わせてくれました。


 流石は出来る執事ですね!

 因みに僕の身体が、何故こんなにも幼くなってしまったのか?

 何故年齢が無くなったのか? については推察できます。


 僕が性別を買ったとき。

 オルグイユは……なんと言うか、ちょっと残念な感じになってました。


 その事から、性別を買う際にフェルの事をイメージしたのですが……恐らくはそれが原因でしょう。


 なんと言っても、フェルはまだ小さいですからね。

 まぁ今は僕の方が小さいので、何とも言えませんが……この身体はフェルのイメージに影響を受けているはずです。


 流石に神様達も僕の身体の構築には干渉出来無かったでしょうからね……もし、神様達が干渉した結果なら流石に引きますけど。


 うん、多分それはないでしょう。

 世界を治める神々がロリコンって、流石にそれは……無いと信じたいですね。


 もし仮に神様達がロリコンであっても、それは多分、良かれと思ってやってくれた事。

 性別の固定もそうでしたしね。


 性別を固定するだけで無く、身体の構築にまで干渉すれば、かなりの負担があったはず。

 そうですね……1発ずつ殴ったら、許してあげるとしましょう。


 えっ? 今の流れで結局殴るのか? そりゃあ勿論、殴りますとも。

 確かに僕の事を考えてくれての行動なのでしょうけど……それはそれ、これはこれですからね。


 まぁ、神様達が干渉したかどうかは不明ですが。

 次に会った時に聞いてみるとしましょう。


 それにしてもこのお屋敷、良きです!

 広さ、構造、立地と三拍子揃っています!!


 何より、この屋敷にある地下室。

 職員さん曰く、倉庫だそうですが……これはウラがありますね。


 一見すると広いだけで何の変哲も無い地下室。

 しかし、魔法で何かを隠した様な痕跡があります。


 放棄された屋敷の地下室に、魔法で何かを隠した様な痕跡。

 しかも、つい最近までこの屋敷を帝国騎士団が、つまりは帝国が封鎖していたときた。


 これだけで、僕がこの屋敷を欲しいと思うのには十分すぎる理由です。

 それに加えて、このお屋敷には知っている気配によく似たものを感じます。

 特にあの地下室からは強く感じますからね……


 僕がこの屋敷の中を見回っている間に、神様達の事を思い浮かべたのもこの気配のせいでしょう。


 何せこの屋敷には、神様達と同質の気配が満ちていますからね。

 神様達が放っていたのと同じ神聖な気配。

 何やら訳ありそうな地下室。

 そして商会に使う為の条件も完璧……買いですね。


「コレール、ここが良いです」


「承知致しました。

 職員さん、この屋敷を買わせて頂きます」


「えっ!」


 すると職員さんは驚いた様に……と言うか普通に驚いていますね。


「ご紹介させて頂きましたし、売る側である私が言うのはなんですが。

 行方不明者が立て続けに出ている、不気味でかなりの訳あり物件です。

 本当によろしいのですか?」


 不気味ですか。

 職員さんには、この気配が分からないのでしょうか?


 今にして考えるとその可能性が高そうですね。

 神聖な気配が分かるのであれば、帝国はこの屋敷を封鎖はしても手放しはし無かったでしょうし。

 恐らく職員さん同様に、帝国の人達もこの気配が分からないのでしょうね。


「ええ、お支払いは今済ませてしまっても?」


 すると職員さんは、申し訳なさそうな顔をして頭を下げました。


「申し訳ありません。

 まさか、売れると思っておりませんでしたので書類を持って来てい無いのです」


 う〜ん、確かにこの神聖な気配が感じ取れないのであれば、行方不明者が出て何故か国が管理していた不気味な物件。

 仕方無いですよね。


 この後、馬車で再び商業ギルドに戻り、一括で支払いを済ませました。


 それにしても、これは思わぬ収穫ですね。

 あの神聖な気配と僕が感じた違和感、この2つの要因の意味する事は……


 2つ目の八大迷宮、発見ですっ!!

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