第109話:その頃陽太は

正直今回の件に関しては初デートの時程ではないにしろそれに次ぐレベルのやらかし案件であるという認識があったもののこれが原因で俺らの関係が悪い方向へ進むことは絶対にないという確信があった。


あったというのに今日の彩乃は態度や表情をコロコロ変えてきたせいか1000%大丈夫という安心感があるにも関わらずどこからか不安心が沸き上がってきて。


まるでカレールーを入れる直前の鍋にそれがいきなり塊のまま入ってきたかと思えばどんどん勝手に広まってきただけでなく、何者かがそれをお玉でかき混ぜて四方八方、360度全てに不安心という名のカレールーをいきわたらせようとしてくるような恐怖心からか若干泣きそうになりながら起き上がろうとしたところを彩乃に止められた瞬間脳の限界がきてしまったのか気付いた時にはどこかいたずらっ子のような顔をした彼女が俺のことを真上から見つめていた。


そしてそのままの状態で、でも少しだけ自分の顔をこちらに近づけてきてから


「うーそ♡」


「………ふぇ?」


「だから、うーそ♡ ちゃんといつも通り私が塗ってあげるから目を瞑って♡」

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