第105話:その頃彩乃はⅠ

普段はできるだけ早くあかりとひーくんが仲良くなれるようにと私・ひーくん・明日香・あかり・菱沼の五人でいつものバス停まで向かっているのだが、今日は私達二人に相談したいことがあるということで二グループに分かれて歩き始めて一分ほどが経った頃……そろそろ本題に入る覚悟ができたのか彼女はどこか不安げな表情で


「私って一之瀬先輩に嫌われてるんでしょうか?」


「少なくとも私はよーくんのそんな素振りを見たことがないんだけど、彩乃ちゃん的にはどう?」


「うーん、私も明日香と同じかな。って言っちゃうと話が終わっちゃうから聞くけど、私達がいないところでひーくんと何かあった?」


「これは昨日の朝のことなんですけど、私が大学に着いた時にはまだ一之瀬先輩と一年生の男子二人しかいなかったんですよ。なので先輩に朝の挨拶をしようかなと思ったらその二人がいきなり口論になりだしちゃって」


「最初は私がなんとかして止めようかとも思ったんですけどやっぱり男子の喧嘩に割って入るのはちょっと怖くて……でも他の人が来る気配はないしってことで近くにいた一之瀬先輩のところに行って」


『おっ、おはようございます』


「って助けを求めるにしてもまずは朝の挨拶からということでそれをしたらなんかちょっとぶっきらぼうに『おはようございます』って敬語で返されまして」


「「あははははは」」


おそらく彼についてまだ何も知らないあかりからしたらその時点で自分は嫌われてるかも? と思ったのだろうが実際は全然そんなことないためつい明日香と一緒に笑ってしまうと彼女は『????』みたいな顔をしながら


「私なにか変なこと言いましたか?」


「ううん、全然そんなことないから続け……ぷっははははは」


「この時点ではまだ笑い話で済むけど、もしかしたらって可能性もあり得るんだからあんまり笑っちゃダメよ、彩乃ちゃ……ふふっ」

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