第98話:ひとまずは仲直り? (下)

「………………」


「あひゃの? (彩乃?)」


優しい顔で人の頬を引っ張ったりしながら褒めてくれていた彩乃が突然後ろを振り向いてしまったため、また藤村に彼女を取られてしまうのではないかと不安になった俺はそう声を掛けるとさっきと同じ表情でこちらに向き直り


「さっき家庭科室で美咲に何があったのか聞きながらプリンを作ったんだけど食べる?」


「はへる! (食べる!)」


彩乃が作ってくれる料理はどれも美味しいためつい大きい声でそう答えてしまったものの、頬をむにゅむにゅされていたおかげで健太達三人以外には聞こえていなかったらしく内心ほっとしていると彩乃がマグカップと小さいスプーンをこちらに差し出してきて


「まだカラメルソースとかは熱いだろうから気を付けて食べてね」


「うん!」


「じゃあはい♪……の前に、美咲」


そう言いながら彩乃はこちらが受け取ろうとした二つをスッと引っ込められただけではなく俺の嫌いな藤村美咲が居心地悪そうにしながらも自分の前へと出てきて


「そのー、さっきは一之瀬君を試すようなことをしちゃってごめんね」


「ん」


「………えーと、これは許してくれたってことでいいのかな?」


「ん」

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