第56話:初めてぶつかった壁と悔しみ
考えることを完全に放棄することにした俺は彩乃を自分の方に引き寄せた後、左腕は彼女の腰に回し、右手は頭に優しく添えるようにすると……あっちも嫌ではなかったのか顔を胸にうずめてきただけでなく、そのまま抱きしめ返してきたためその態勢を維持したまま
「彩乃が今泣いている原因は俺にあって、彩乃が毎日弁当を作ってくれていた理由の一つにお金じゃお返しにならない何かがあることまでは分かったんだけど……分かったんだけど、こっからはどうしても分からないんだわ」
(分からないせいでどうすればいいか分からないのが凄く悔しい。好きな子が何を思い何を求めているのかが分からないのが凄くすごく悔しい。正直悔しすぎて、こんな自分が情けなさ過ぎて泣きたいくらいだけど……ここで俺が泣くの違う)
「でも二度と同じ失敗はしない……いや、もう二度と彩乃のことを泣かせるようなことはしないって誓うから。そもそも別れる気なんて一ミリもないけど……もう少しだけ時間をください」
自分でもちょっと何を言っているのか分からないが今の俺の気持ちを伝える言葉がこれしかなかったためそう言ったのだが、彩乃には通じたのか抱きしめる力を少し強めたのち小声で
「(じゃあ、絶対に私と別れないっていう証拠をホワイトデーのお返しにちょうだい?)」
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