第34話:その頃彩乃は

今日は球技大会ということで私は明日香とペアを組んでバドミントンに出場していたのだが、惜しくも準々決勝で負けてしまった。そのため二人で話しながら自分達の教室へ帰ろうとしていたところたまたま校長とすれ違い


「もし間違っていたら申し訳ないのだが、君は普通科2年2組の佐々木彩乃君で間違いないかな?」


「えっ、まあそうですけど。私に何か用ですか?」


「同じクラスで佐々木君の隣の席に座っている一之瀬陽太のことで話したいことがあるんだけど、ちょっと校長室までいいかな?」


(ひーくんのことで私に話ってなに? というかなんで彼だけ呼び捨て?)


「彩乃ちゃん、どうするの?」


「ああ、倉科君のことはよく一之瀬から聞いていて信用できることは既に知っているから、もしあれなら一緒に来てもらっても構わないよ」


「……そういうことでしたら」


正直今の発言のせいで謎が深まったどころかこの人自体に不信感を持ち始めていたものの、このまま黙っていては話が進まないのはもちろんひーくんのこととなれば無視することができないということで了承すると


「ありがとう。じゃあ早速で悪いのだがこちらも少々時間がないものでね、急いで校長室まで向かうしよう」






ということで私達三人はそのまま目的地へと直行し、今は明日香とソファーに座って紅茶を入れてくれている校長を待っているところなのだが


「なんというか……これって校長室というよりただの部屋だよね?」


「初めてこの部屋に入った人はみんな倉科君のような感想を言うんだが、学校の中に一つくらいこういった場所があるのも悪くないだろう? ……茶葉が完全に私の好みだから若い君達の口に合うかは分からないけれど、よければどうぞ」


「………………」


「どうやら佐々木君は私のことを信用してくれていないみたいだから大人しく白状させてもらうが、ここからの話は一之瀬以外には内緒で頼むよ?」


「分かりました」


「まあ校長先生がそう言うなら」


「うん。と言っても別に大したことじゃないんだけどね、実は私と一之瀬は彼が一年生の時からちょっとした縁があって友達なんだよ。それで私はイチ、あっちは私のことを校長もしくは爺さんと呼び合っている」


「「えぇっ⁉」」


あまりに予想外な暴露だったので二人揃って大声で驚いてしまったものの校長はそんなこと気にせず、自分のスマホを弄りだしたかと思えばそれの画面をこちらに見せてきて


「えっ、うそ⁉ よーくんのL○NEだ。しかもトプ画とかも全部同じ」


「なんで校長が持ってんの⁉ 私はまだ持ってないのに」


「どうやら二人とも信用してくれたようだね。……ではここからが本題だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る