第18話 外伝 「月への贈り物」

 満開だった桜が葉桜になった頃、小鳥遊勝也は息子の祐介とレストランで昼食を取っている。テーブルの上に並んだ皿がほとんど空になったとき、祐介が勝也に話しかけた。

「なあ父さん」

「ん?」

「女の子ってどんなプレゼントすればいいと思う?」

「………ふ~ん。なるほどな~」

「なんでニヤけてんだよ。気持ち悪いぞ」

「いや、悪い。よくサプライズとかドラマティックなプレゼントとかあるだろ?あれは止めた方がいい」

「え?なんで?」

「相手のセンスや好みが合えばいいが、合わなければ地獄だ。速攻フラれても文句言えんぞ」

「そうなんだ…」

「あと飾らない方がいい」

「飾る?」

「無駄にオシャレなものじゃない方がいいってことだよ。大切なのは何を贈るかじゃなく、相手に自分の気持ちを伝えることだろ?プレゼントなんてそのきっかけにしか過ぎない。気をつけなきゃいけないのは、プレゼントするものによって意味があるってことだ。ネットで調べれば出てくる。昔それで大失敗したやつがいる」

「それって悟志さんですか?」

「よくわかったな。あいつ、知識は豊富なのに色恋沙汰や異性のことになるとポンコツなんだよ」

「………意外だな」

「まあ、美月ちゃんに渡すならシンプルな物の方がいいだろ。そんで自分の気持ちを言葉にして渡せ」

「そうだな…。いや!まだ美月って言ってないだろ!?」

「まだ?ってことは美月ちゃんだな」

「ぐぅぅ……。じゃあ父さんは母さんに何プレゼントしたのさ!?」

「ん?結婚指輪。母さんからも贈られたけどな」

「…それ卑怯じゃない?じゃあなんてプロポーズしたの?」

「なんだ、お前美月ちゃんにプロポーズする気だったのか?」

「待てって!違う!まだ早えだろ!?」

「まだか…。なるほど」

「あっ!誘導尋問かよ!?」

「お前が勝手に喋ったんだろ?なんてプロポーズしたかは、お前がプロポーズするとき教えてやるよ」

「くっそぉ…。さすが月見里探偵事務所の副所長…」

「関係ねえよ。まあ、俺のお勧めはフラワーアレジメントだな」

「フラワーアレジメント?」

「小さくて安いやつでいい。お前よく美月ちゃんの家に遊びに行くだろ?そのとき、どこに置いてあるか見とけ」

「ん~…、わかった」

「やっぱり美月ちゃんじゃねえか」

「…あ!」


 後日、祐介はフラワーアレジメントを美月に贈った。

「…なにこれ?」

「フラワーアレジメント。どう?」

「私そんなに花が好きな訳じゃないんだけど」

「あ~…ゴメン」

「まあ、貰っておくけど」


そのまた後日、美月の家に遊びに行った祐介は、贈ったフラワーアレジメントがベッドの頭の棚に置いてあることに気づいた。

「あれ?あれって机とかに置かねえの?」

「勉強するとき邪魔になるでしょ。そこしか置くとこなかったの」

 祐介は勝也から「どこに置いてあるか見とけ」という言葉を思い出した。

「………ふ~ん。なるほどな~」

「なんでニヤけてんの?声でわかるから。気持ち悪いんだけど」

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