第22話





「そう言うボタンがいっぱいついてるのって私、よくわからないんだけど……。でも、すっごい事なのよね、きっと」


 そんな事を口にする麗佳。どうも機械類は苦手であるらしい。現代人として生きていけるのか極めて怪しい。




「や、やったよ、にぃ。初めて、にぃ以外に褒められたよ。しかもあの麗佳詩羽さんに。これまで数ある炎上事件に首を突っ込んだ挙げ句、安全件からしっちゃかめっちゃか論調の誘導して、火に油を注ぎ続けてきた甲斐があったよ。SNSアカウント撃墜王って掲示板で呼ばれていたのがこんな形で役に立ったの」




「うんうん、やったなー、てめぇそんな事しちゃ駄目だっていつもいってるでしょ、ぶっ飛ばすぞ夕飯は抜きだな」




「もうしないから許して、にぃー」


 乃雪のそんな声を受け、仕方なく許してやる事にする俺。ついでに今回の件にてサポートしてくれた事を加味してダンボール箱を撫でてやると「ぬっへっへ」と猫なで声が返ってきた。直接撫でてはいないのだが。妹はちょろい。




「……まぁ、こう言うのは普段の行いが物を言うの。にぃみたいなカースト底辺這いずり回り太郎じゃなかったら、こんな簡単に論調の誘導なんてできないから。さすがはにぃ、悪評の塗れさせたら右に出る者はいないよ」






「おう、褒めるな褒めるな。照れるじゃねーか」




「いや、どう考えても褒められてないと思うのだけど」


 そんな麗佳のツッコミなど聞こえなかったとばかりにスルーする。自分の悪評を見なかったフリにする事など朝飯前。でなければ毎日SNSに書かれる罵詈雑言だけで死ねるまである。






「それはそれとして。にぃ、一応SNSやら掲示板やらで参加者らしき人物がいないかは探って、ついでに学校に幾つか設置されている監視カメラの映像もクラッキングしてみたの」




「相変わらず平然と高校生離れした事するなぁ……。それで結果は?」




「成果はなし。さすがに姫崎さんだっけ? あの人みたいな自己顕示欲バリバリの思考垂れ流しのちょろい人はいなかったの」




「そうか」


 さすがにあんな風に安易な事、そうそう起こり得ないか。つうか本当、口悪いなこの妹。喋り方がダウナーっぽいのにどうしてこうも口が回るのだろう。逆に凄い。




「つまり参加者、敵の発見に務める必要があるわけだ」




「……あっ、じゃあ体育の時間で肩の幾何学模様を確かめるのはどうかしら?」


 麗佳の発言を受け、俺は首をかしげる。




「いや、その考えは悪くないと思うんだが……。それだとクラスの連中、それも同性の奴しか分からないからな」


 着替え中での確認は基本中の基本ではあると思うが、できればもっと広い範囲で確認する方法があれば――――




 そんな中、俺はとある方法を思いついた。




「――――そうか。多くの生徒に対して確認できる機会があるじゃないか」


 そして、二日後。俺たちは作戦を実行する事に相成った。




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