くものはれまに
あまりにも呆気なく失われたもの。
『ようこそ、ぷちぷち日和へ』
白いページに、淡い色彩で浮かぶ文字。
今は閲覧避けを施された、かつて一日に何度も足跡を残されたサイト。
最低限のフレームと、最低限のコメントと、どこかで撮られた夕暮れの風景の画像。
メインは文章ではないが、飾らない文章が好評でほぼ毎日更新されていたサイトだった。
その、最初のページに新しい文字が浮かぶ。
『はじめまして、またはお久しぶりです。
二年も放置していましたが、見てくださる方はどれだけいるのでしょうか。
正直、このサイトに戻ってこれるとも思っていませんでした。
この二年間、得たものも失ったものもたくさんありました。
けれどそれが全部無駄だったとはいまの私には思えません。
いまの自分は、過去の自分があるから。
それを否定してはなにもできなくなると気づいたのです。
前置きが長くなりましたが、二年も放置しておいてなのですが。
また、やりたいようにやっていきたいと思っています。
根性のない管理人ですが、またよろしくお願いします』
ざっと最初から最後まで目を通して、終了。
最後にエンターを押すと、浮かび上がる文字列。
『公開しますか?』
私は少しだけ迷って『はい』にカーソルを向けた。
次に浮かんだろう『完了しました』の画面を確認せずにパソコンを閉じる。
直後にインターホンが鳴った。
時計を見れば、約束の時間になっていた。
「はーい!」
私は叔父に絡まれているだろう彼を助けに階段を慌ててかけ降りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます