第71話 記憶の深淵

 夕食としてセアラが作った肉団子入りのスープは、彼女が初めて一人で作ったものにしてはとても美味しく出来ており、孤児院の大人にも子ども達にも大好評だった。院長などは感極まり、涙目で何杯もお代わりしており、シェラや他のスタッフに笑われていた。


 食後、年長の子ども達が年少者を連れて寝る支度を整える為に部屋を出て行き、他のスタッフも食事の後片付けや寝具を整える為、風邪をひいている子どもへの薬湯づくり等で席を外した。

 今は、食堂にはミアとシンの2人が残っている。念のため、周囲の気配を確認してから、シンは気になっていた事を口にした。


「そういえば、ミアちゃん。森に薪を拾いに行ったってシェラから聞いたけど……」

「!! は、はい。……ごめんなさい」


 叱られると思ったのか、しゅんと小さくなりながら、ミアは上目遣いに少しだけシンを見た。その反応にやんわりと微笑みを返しつつ、シンは首を横に振って眉を下げた。


「言い方が悪かったかな。ごめん、ミアちゃんを責めてるんじゃないんだ。……ただ、誰にも一言頼れないくらい、みんな忙しかったのかなぁ、って思って……そうだとしたら、留守にしていた僕にも責任があるし」

「え?! い、いえ、違います! そんなんじゃないです!」


 シンの言葉に、慌てた様にミアが両手を振った。


「全然大丈夫って思ったんです! 私が! えっと、その……去年は普通に何度も行った場所でしたし、森って言っても、町の南門が目に入るくらいの場所だったから……まさか妖魔モンスターが出るなんて思わなくって」

「ん? そんなに町から近い場所だったの?」


 彼女の言葉に違和感があり、シンは眉を顰めて聞き返した。戸惑いながらもミアは頷き、話しを続けた。


「南門を出たすぐの場所、広場みたいにひらけていますよね? その、森沿いの場所で薪を拾っていたんです。そしたら、森の奥から突然……」


 言いさして、ミアは思い出したのか顔を青くして小さく身震いをした。


「見た事もない、大きな妖魔モンスターが……っわ、私、それで、動けなくなっちゃって……っ」


 語尾を震わせながら言うと、彼女の黒い瞳には涙の膜が出来た。労わる様にシンは優しく声を掛けた。


「そっか……ごめんね、怖い事思い出させちゃって」

「っう……ふえっ シンさ……っ こ、怖かった……すごく、怖かったですっ」

「ミアちゃん……」


 この反応は大袈裟ではなく、本心から怖かったのだろう。冒険者とは違い、一般市民であるミアは、妖魔モンスターを目にすることなど殆ど無いはずだ。そんな相手に襲われて怪我をしたのだ。下手をしたらトラウマになりかねない。シンは、泣きじゃくる彼女が安心できるように出来るだけ柔らかい声音を作りながら語り掛けた。


「でも、怪我だけで済んで良かった。――シェラから話しを聞いた時は、本当に吃驚したよ」

「ぐすっ ごめんなさい……畑に出られていたエルテナ神殿の方々が直ぐに気付いて駆けつけて下さって……妖魔モンスターは1体だったので、大勢人が来たら驚いて逃げて行っちゃったみたいです」

「そっか」


 微笑んで頷きつつも、シンは「明日、ソフィアがもしエルテナ神殿に行くのだとしたら、自分も同行して礼を言わなくてはな」などとぼんやりと思った。――その時、


「……――!! そうだった!!」


 ハッとして席を立つ。夕食をとっていた間に、もう外は暗くなっている。――ソフィアと別れてから、随分と時間が経ってしまったのだ。


「ごめん、ミアちゃん! 僕もう帰らなきゃ!」

「えっ?」


 驚いて目を丸くするミアに答えず、シンは足早に食堂のドアの方へ向かう。すると、「待って!」と背後から切羽詰まった声が掛かった。え、と振り返ろうとしたシンの背中に、軽い衝撃が加わる。ぎょっとして肩越しに己の背中を見ると、ミアが縋りつく様に両手で彼のシャツを握りしめていた。


「ミアちゃん?」

「ご、ごめんなさい……でも、でも……シンさん、今日だけ……今日だけで良いんです。孤児院ここにいてくれませんか? っ私、こわ、くて……っ」


 黒い円らな瞳から、堪え切れなくなった涙がはらはらと彼女の頬を伝っていた。シンは、ほんの一瞬だけ眉を顰めた後、すぐに柔らかく微笑んで彼女の肩に手を置き、そっと身体を引き離した。


「大丈夫だよ、ミアちゃん。ここにはエルシオン院長がいるし、多分、シェラも言わなくても勝手にしばらく泊まり込んでくれると思う。2人ともすごく強いから、安心して」

「で、でも、私、シンさんに……」

「あ。あと、明日、ミアちゃんが妖魔モンスターに遭遇したって場所を念のため調べに行ってみるよ。もし妖魔モンスターが見つかったら、ちゃんと退治もする。任せておいて!」

「シンさん……」

「だから、心配しないで、ね?」


 にっこりと笑って、彼女の肩に置いたままだった手で、ぽんぽん、と軽く彼女の肩を叩く。すると、強張っていたミアの表情がほんの僅かに和らいだ。


「……はい。……私、信じます。シンさんを」

「あはは、ありがとう! じゃあ、僕帰るね!」

「はい」


 ミアが頷くのを確認してから、今度こそシンは身を翻して食堂を出た。そしてそのまま、孤児院を出ると橙黄石シトリアやじり亭へと向かって駆けだした。



* * * * * * * * * * * * * * *



 ――時刻はややさかのぼる。



 レグルスに促されてソフィアが向かった先は、春告鳥フォルタナの翼亭の一室――彼の宿泊する一人部屋だった。

 意外なことに、部屋には荷物らしい荷物は無く、宿の提供するままの部屋の状態を保っていた。――確か、“旅の吟遊詩人”と名乗っていたから、旅慣れた者にありがちな、あまり荷物を持たない人物なのかもしれない。



 部屋に入った後、所在なさげにドアの前に立ったままのソフィアを見て、レグルスはクスクスと笑って手招きをした。


「取って食いやしないからおいで」

「……」

「そうだ! お茶か何か飲むかい?」

「え、いえ……結構よ」

「そうかい? あ、ずっと立っているのも疲れるだろう? ホラ、そこの椅子に座るといい」


 文机の椅子を指しながら、自身はベッドに腰掛ける。その様子を確認してから、ソフィアは椅子に座った。


「さて……何から話そう。うーん……まずは“君と僕が既知の間柄か”という事について、かな」


 座りながら長い脚を組んで、レグルスは伺うようにソフィアの顔を覗き込んだ。少し考えてから頷くと、彼は頷き返し、あっけない程簡単に答えを口にした。


「そうだよ。君がヴルズィアにいた頃から、僕は君を知っている」

「……っどうして!」

「おやおや……、というのは、に対しての疑問だい?」


 大仰に両手を広げ、いっそ朗らかにさえ聞こえる声でレグルスが問い返す。反射的に椅子から腰を浮かしかけるが、辛うじて堪えながら押し殺した声でソフィアは再び問うた。


「どう、して、あなたが、……あそこに来る必要があったの?」

「そうだねぇ……なぜだと思う?」

「っその言い方は、卑怯だわ」


 質問に質問を返され、小馬鹿にされた気分になりソフィアはキッと睨んで非難した。しかし、レグルスは余裕を崩さないまま、やや演技がかった様に肩を竦めて首を横に振る。


「おお、僕の可愛い小鳥よ、気分を害してしまったならお詫びさせておくれ」

「なっ……」

「僕はいつでも、君の味方のつもりなのだから、何でも聞いてくれて構わないのだよ?」

「――味方、って」


 眦を釣り上げながら抗議しようとするも、思考が上手くまとまらず……結局、言葉が上手く出て来ず、ソフィアはそのまま唇を噛んだ。レグルスはというと、特に変わった素振りも無く言葉を続けた。


「嘘は言ってないさ。僕は、君の望む事をするし、君の望まない事はしない」

「……」


 レグルスの勿体ぶった言い回しに、ソフィアは顔を顰めた。先ほどから、表面上は会話している様に聞こえるのだが、中身が何もない言葉ばかりが交わされている気がする。ソフィアからの言葉の全てが、彼の上で上滑りしており、彼自身に全く届いていないかの様にさえ思える。



(……はぐらかそうとしているのかしら。それとも……試しているの? ううん、もしかしたら、元から人を食ったような態度の人なのかもしれない)


 先ほど、ミアが怪我をしたと聞いた直後に、己の知りえない真実を知るかもしれない者が現れた事で、ソフィアの心は冷静さに欠いていた。改めて自覚し、ソフィアは唇を噛んだ。



(……駄目だわ。まずは落ち着かなきゃ)


 念じる様に心の中で呟き、小さく息を吸って吐き出すと、ソフィアは再びレグルスの様子を窺う様にじっと見つめた。すると、新緑色の双眸が柔らかく見つめ返して来た。


「もうそろそろ大丈夫かな?」

「……え」

「さて、君はどうするのが正解だと思う?」

「え?」


 といった顔でレグルスが問いかけてくる。――まるで、謎かけ遊びをして、相手が“正しい答え”を出せるかどうか、待っている子どものような顔だ。揶揄からかわれている気になりながらも、ソフィアは冷静に心の中で先ほどまでのレグルスの言葉を反芻した。



 ――“僕は君の望む事をするし、君の望まない事はしない”



「……あなたが知っている事を、あたしに教えて」


 ソフィアがキッパリと言い切ると、彼はにっこりと破顔して頷いた。


「そうだよ、ソフィア。必要なことはきちんと、望まないとね!」


 パチパチパチ……と、レグルスの乾いた拍手はガランとした一人部屋の中で大して響かずに消えた。いっそ白々しささえ感じる。――彼の言葉通りに受取るとしたら、今のは“褒められた”のかもしれないが、嬉しさなど感じる訳もなく、ソフィアは先を促す様に目線を投げかけた。それに答える様にもう一度、今度は小さく頷くと、レグルスは小首を傾げた。


「さて、まずは……そうそう、僕が君のいた村を訪ねた理由だったっけ」

「……ええ」

「それは、の事を指しているのかな」

「え?」

「君に食料や書物をたまに届けていた時の事?」



(……それ以外にあるというの?)


 予想外に再び問い返され、ソフィアは沈黙して思案した。――彼は、問えば応えてくれるだろうが、“正確に”問わなくては、明確な答えは返ってこない気がした。



……それってって事? ……けど、物を届ける時以外、何か…………あ、)



は、何だったの?」

「出会ったきっかけの事かい? それならば簡単だ。単に通りすがりだよ」

「はぁ?!」


 ソフィアの住んでいた小屋は、少なくとも村の門の中にあった。門の内側に入らなくては通りすがる事など出来ないはずだ。むっとしてソフィアは口をひらきかけるが、慌ててぐっと堪えた。



(流されちゃ駄目……この人のペースにのまれない様にしないと)


 十分間を置いてから、ソフィアは改めて口をひらいた。


「どこで?」

「村の裏手の崖の下さ」

「えっ」


 淀みなく返されたレグルスの言葉に、ソフィアは面食らった。――ソフィアの暮らしていた小屋が最初に出会った場所というわけでは無い、という返答は予想外だった。

 そもそもソフィアは、村の内外はともかく、近くに崖があるという事自体、初耳だ。戸惑いがちに疑問を口にする。


「村の裏手って……奈落の滝じゃなくて?」

「あっはは☆ 滝に落ちたら、その時にこっちテイルラット側に来てしまうじゃあないか」


 真剣に問うた言葉に対して、さも可笑しい、といったていで笑うレグルスに苛立ちを感じつつも、ソフィアは顔を顰めて黙り込んだ。全く気にも留めずにレグルスは言葉を続ける。


「君の暮らしていた村。あそこの裏手には、10メートルほど落差の崖があるのだよ。僕はその下で、初めて君に会ったのさ」


 ――全く覚えがない。戸惑いを隠そうと不機嫌そうな顔になりつつも、ソフィアは続けて尋ねた。


「……それって、どのくらい前の話し? 少なくともあたし、物心ついた頃には1人であの小屋にいたのよ」

「そうなのかい? うーん、そうなのかもしれないねぇ」


 再び要領を得ないレグルスの返答に、ソフィアは益々むっとした。その表情を見て、彼は「うーん」と僅かに苦笑して唸った後、右手の人差し指をすっと目の高さに掲げて明るい声を上げた。


「よし! では、一つ、僕から尋ねようか」

「え……え??」

「問題! ――君は、君自身が生まれてこの方、ずっと1人だったと思うかい?」

「え?」

「ああ、僕を除いてね。――もっとも、僕の事も粗方忘れてしまっているみたいだけど?」

「……」


 クスクスと愉快そうに笑うレグルスに対し、ソフィアは不貞腐れた様に口を引き結んだ。それから、頭の中で「冷静になれ、冷静になれ」と繰り返しつつ、思考を巡らせてから、ゆっくりと口を開いた。


「さっきも言ったわ。あたしは、ずっとあの小屋に1人でいたって」


 そう言うと、彼は少しだけ目を丸くした後、「ぶっぶー!」と口を尖らせてブーイングをすると、呆れた様な顔で立てていた人差し指を横に振った。


「やれやれ、外れだよソフィア君。――君は、生まれたばかりの赤ん坊が、廃屋同然の小屋で一人で生きていけると思っているのかい?」

「……え?」

「乳飲み子が、残飯や森で食料を拾って生きていけるかい? ろくに立つことが出来ない幼子が1人で冬を越せるかい?」

「……」


 返答に詰まり、呆然と目を瞠るソフィアに、彼はため息を吐いて両手を上げた。


「記憶に無くても、知識としてはあるだろう? 答えは“否”だ」

「で、でも……だって、あたし、あの村でしか……」

「君があの小屋で過ごし始めたのは、丁度3つくらいの頃だろう。大抵の人間は、3歳以前の記憶は自然と忘れる様に出来ている。“覚えている”という者もいるが、特殊な者以外、大体は周囲から聞かされた出来事を己の記憶としてすり替えて定着させているのだよ」

「……じゃあ、あたしはあの小屋で暮らす前は、一体……」


 思わず椅子から立ち上がる。胸の鼓動が早まり、じっとりと背中に嫌な汗がにじんだ。


「あたしは誰かと一緒にいたって事……?」


 まさか、レグルスとだろうか、と恐る恐る彼を見ると、心の声が通じたのか、彼は首を横に振った。


「いいや、僕ではない。――答えは簡単。君は、それまではずっとだったのさ」

「?!」


 ガタン、と椅子が大きな音を立てた。無意識の内に後ずさったソフィアの足がぶつかったのだ。それにすら気付かず、ソフィアはよろける様に更に後ずさった。


「は、はおや……?」

「おや、どうして驚くんだい? 人も妖精エルフも、誰しも母親のはらから生まれるものだろう?」

「だ、って、……っ」


 その時、不意に幼い頃に聞いた、小屋の板壁の向こうで誰かと誰かが声を顰めて話している会話を思い出した。



 ――“あの女は昔、あれ・・を置いてこの土地から出て行ったのよ”

 ――“はた迷惑な母親だわ”



「……」

「うん? どうかしたかい?」


 紙のように白くなった顔色で押し黙るソフィアに、レグルスはのんびりと小首を傾げた。


「だ、だって、……あたしのは、はおや、は、あたしをあの村に置いて出て行ったって……」

「間違いではないが、真実ではないね。大方あの村の人間に、適当な事を吹聴されたのだろうが」


 ふむ、と呟き、レグルスは両腕を組んで僅かに顔を顰めた。


「君の母君は、結果的に君を置いていく事になったが、まで君を守ろうとしていたよ。、今君がこうして過ごしていられると言っても過言ではない」

「さいご……?」


 ぞくり、と肌が泡立つのを感じる。頭のどこかで“これ以上聞いてはいけない”と危険信号が明滅するが、悪い魔法にかかったかのように咽喉がふさがり声が出せず、身体も指先1本動かす事が出来ずにいた。


「君の母君は、僕が君と出会った時に亡くなったのだよ」

「……え」

「僕が埋葬したからね、間違いない」

「…………え?」


 共通語で話しているはずのレグルスの言葉がまるで理解出来ず、ソフィアは立ち竦んだまま硬直した。足元から、まるで血液の代わりに冷たい水が体中を巡るかのように、全身が冷たく冷えて行く。

 レグルスは、チラリとソフィアの様子を見たが、気にした様子もなく朗々と歌う様に言葉を続けた。


「僕があの崖の下で、君と出会った時、君は既に事切れる間際、瀕死の重傷を負っていた。だから、覚えていなくても無理は無いかもしれないがね……――可哀想に。母君と共に、崖の上から落ちたらしくてね、折り重なる様に倒れていたのだよ。――落下の際に、母君が君を抱きかかえて庇った様だが、それなりに高さのある崖だ。その衝撃は、幼い君が耐えられるようなものではなかったのだろう」


 両手で己の胸を覆い、やや演技がかった悲しそうな口調で言い終えると、レグルスは小さく息を吐いた。


「そして、母君は君を何とか助けようとした。――その結果、君は助かり、母君はそのまま亡くなったという事さ」

「な、なん、とか、……って、」

さ」


 激しい動揺を隠せないソフィアの声に、ゆるりと微笑んでレグルスは繰り返した。それは、決して揶揄からかうような口調ではなく、どちらかというと自嘲を含んだ声音だった。


「******、というのはね」


 続けて口にしてから、レグルスは一度言葉を切った。ほんの僅か間を置いてから、再び口をひらく。


「――妖精エルフの言葉で“奇跡の”、または“掛け替えの無い”、と冠した、君の事を呼ぶ名の事でね、君の母君の最期の言葉さ」

「う、そ……」


 絞り出したソフィアの抗議の声は、情けないほど震えており、弱々しいものだった。反対に、レグルスはハッキリと答える。


「嘘じゃあない。君を******と呼んでいたのは君の母君、そして、母君からその名を聞いた僕だけだよ」

「嘘……嘘っ だって、そんな……っ」


 悲鳴のような声を上げると、くらりと視界が揺れた。片手を頭に当てて堪えようとするも、地面が波打つ様に揺れてまっすぐに立っていられない。


「…………っあ……」


 ガンガンと強い頭痛が始まり、耐えきれずにもう片手も頭に当てて、ソフィアはとうとう部屋のドアの前までよろけたまま後ずさった。


「っあ、……う、うぅ……っ」


 両手で頭を抱えたまま、ぐらぐらと回る視界の中で、柔らかい金の髪と新緑の光がチカチカと瞬きながら、ソフィアの記憶の深淵にある欠片と重なり合い、鮮明に蘇る。


 ――――反転する天と地

 ――――己を抱える、温かく大きな腕

 ――――呼ぶ 声

 

「――――――――っ!!!」


 ソフィアが声なき声を叫んだ瞬間、彼女の背後の扉が勢いよく開いた。



「ソフィア!!」



 耳慣れたテノールが聞こえたのは、夢か現か。


 そのままソフィアは意識を手放した。

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