第44話 良く分かる円滑な話し合いの仕方
私の男言葉は少女特有の声色でかなりマイルドな感じになってしまったけど。
アルドーラ公国第二王子スペンサーと私の間に、アルドーラ公国の騎士達が割って入る。
そして学園長と言えば、その場から逃げ出そうとする。
「まったく分かってないですね」
私はニコリと微笑みながら、足元の小石を拾って学園長の脚元に投げる。
膨大な魔力で強化された肉体から打ちだされた小石は、音の壁を超え大気の摩擦熱により炎を浴びて、走り始めた学園長の足元に着弾。
一瞬でエネルギーに変換され地面は爆発する。
そして右足首から先を失った学園長が地面の上で、激痛のあまり転がり悲鳴をあげた。
「「「「なっ!?」」」」
先ほどまで私のことを鴨ネギ程度にしか思っていなかった彼らの表情が変わった。
その表情からは未知への恐怖が色濃く醸し出されている。
私は一歩一歩、スペンサーに近づいていく。
「あ、あいつを……あの化け物を殺せ!」
とうとうスペンサーが私の事を化け物と言ってきた。
まったく酷い人ですね。
自分の都合で、人を拉致しておいて不利になって理解ができなくなったら化け物扱いですか?
30人の騎士達は、スペンサーの命令で腰の獲物を引きぬく。
全員が幅広の剣。
つまり、ブロードソードを構えている。
彼らは私の動きが止まったのを見て、構えたブロードソードを振り上げてから私に振りおろしてきた。
そして――。
「……ば、ばかな……? き、斬れないだと?」
私の体を斬ろうとしてきたブロードソードは、全て体表つまり皮膚の部分で受け止められていた。
もちろん、私は棒立ちのままで一切動いていない。
「知っているか?」
私は男達に語りかける。
すると男達は唾をゴクリと呑み込んだ。
もはやこの場を支配しているのは圧倒的強者たる私。
「肉体強化というのは極限まで鍛えれば、刃すら通さない最強の鎧になるということを」
男達の顔にあるのは驚愕。
ふふ、実際は嘘ですけどね。
斬られている傍から治療魔法で肉体を修復しているだけですけどね。
だけど、私のハッタリが功を奏したのか男達の顔からは、もはや絶望感しか垣間見ることができない。
私は彼らに告げるべく口を開く。
「本当の蹂躙がどんな物か、見せてやるよ?」
それだけ言うと私は地面を踏みこむ。
そして右回し上段蹴りでブロードソード3本を打ち砕く。
刀身が砕け辺りに散らばる前に3人の男達の体は、吹き飛ぶ。
それぞれ、森の木々に激突し倒れた。
「ひ、ひいいいいい」
何人もの騎士達がスペンサーを見限って逃亡しようとしたところで、《飲み水作成》の魔法を発動。
全力全開の魔力解放時の私の水量は、とんでもない事になっていた。
逃亡を企てようとしていた20人の騎士達は、いきなり発生した20メートルを超す巨大な津波に呑み込まれ一瞬で溺れ意識を失い全滅。
その様子を見ていた騎士達は武器を捨てて地面に膝をつき投降の意思を告げてきた。
私はそれを見て、首を傾げながら微笑む。
彼らも私の態度から助かると思ったのかホッと一息ついたところで、私は――。
「ユウティーシアは10歳だから、おじさん達が何をしているか分かんないの」
彼らは必死にこれは降伏のポーズだと説明してくる。
でも私は彼らに、告げる。
「外国語ってよくわからないの」
私の言葉に彼らは、体を震え上がらせていく。
もはやその姿からは、騎士だった面影はどこにもない。
私は、腰を抜かしているスペンサーに視線を向けてから、騎士達を視た。
――1時間後。
「たずげでくだざあい」
スペンサー君が、私に向けて謝罪してくるけどそんなのは知った事じゃない。
私はスペンサー君の脚を魔力で強化した脚で踏みつぶした。
スペンサー君の悲鳴が森の中に響き渡る。
そして、その様子を見ていた騎士達と学園長は顔を真っ青にしながら体を震わせている。
まったくひどいものですね。
死なない程度に、きちんと治療してあげたのに。
スペンサー君なんて完全回復させているのに私を恐怖の眼差しで見てくるから困ったものです。
そして夜が明けるまで10時間、スペンサー君をきちんと教育してあげた。
人を傷つけていいのは自分が傷つけられる覚悟があるやつだけだと。
スペンサー君は、心を入れ替えたように。
「ハイ、ボクガマチガッテマシタ」
と素晴らしい回答をしてきた。
やっぱり、話し合いで解決できると言う事は素晴らしい事ですね。
私は学園長さんに向き直ると優しく問いかける。
これは一種の提案。
「学園長さん?」
私の言葉に、学園長さんがガタガタと震えながら。
「は、はい」
震えながらも答えてくれる学園長さんには好感がもてますね。
「私、学園の事でお願いがあるんですけど。聞いてくれますか? 別に断ってくださっても構わないんですけど。その時には、お昼までスペンサー君と同じお話をしないといけないかなって……「言う事を聞かせていただきます! ぜひ! 全力で手伝わせて頂きます!」……そうですか! よかったです。やっぱり人との交流は円滑なお話から来ますよね?」
私は、学園長さんに快諾して頂けたことにホッとした。
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