第4話 公爵令嬢のチートアイテム作成講座

 ゆっくりと意識が覚醒していく。

瞼を開けると


「ティア! どこか体に痛いところはない?」

お母様は、私が目を覚ました事に気がついたのか話しかけてきた。

私は頭を振る。


「大丈夫です」

 私の言葉を聞いてお母様は目を潤ませている。

 どうやら、かなり迷惑をかけてしまったようだ。

 私は部屋の中を見渡していくと、やはりというかなんというか父親であるバルザックの姿は見られなかった。

 ……まあこの時代は中世より少し前くらいの文明レベルだから情報伝達速度や移動交通機関を考えるとすぐには戻って来られないのも仕方無いのかもしれない。

 

 それでも、失望したことは確かだが……。


「ティア、貴女は自分が何をしたのか分かっていますか?」

 考え事をしていた私は、お母様の言葉で現実へと引き戻された。


「えっと……」

 聞いてなかったとは言えない雰囲気がお母様から発せられている。

 

「……理解してないようですね……いえ。私達がティアに魔法を教えなかったのが原因なのでしょう。ティアは、魔法を使おうとして命を魔力に変換したんですよ? 今後一切、ティアは魔法を使うのは禁止します。ティアは、この国の王妃になるんですから魔法は必要ないんです。わかりましたか?」

 私はお母様の言葉に素直に頷く。

 転生したばかりで死ぬのは、かなり困る。

 お母様も、私が素直に頷いたのを見たのかいつも通り、やさしい笑顔を浮かべて頭を撫でてきた。



 そして、夜になりお父様が、私の部屋に入ってきた。

 その表情から察するにかなり怒っているようだ。


「ティア、無断で断りも無く魔法を使ったそうだな?」

 私はお父様の言葉に素直に頷く。

 

「なんという馬鹿な事をしたんだ! もし死んでいたらどうなると思っていた!」

 お父様の言葉を聞きながら私は、頭の中で私が死んだあとの事を考える。


「婚約をしている王族の方に迷惑がかかります」

 私の言葉にお父様が頷く。

 あとは……。


「後は、シュトロハイム家に迷惑がかかります」

 これにも、お父様は頷いた。


「以上です」

 まあ、すくなくともお父様は私の事をどうとも思ってないし、お母様も一人娘だから心配しているだけだろう。


「他にはないのか?」

 お父様が他には? と聞いてくるが特にないな。


「はい、私が死んだらまた別の子供を産んでくだされば、それで問題ないと思います」

 まあ、もう前世を含めると50年生きたからな。

 あまり生に執着はないな……。

 お父様は、私の話を聞いて唖然としているけど、どうしたものか……。

 

「分かった。詳細は、聞いている」

 私がどうしようかと考えていた所でお父様は話題を変えると、服の中から5センチ程の黒い石を取り出して見せてきた。


「この石に大理石の燭台に魔力を込めたやり方で魔力を込めてみろ」

 私は頭をコテンと倒す。

 なるほど、お母様は寿命を縮めると言った行為を私にやらせるって事は、どうやらお父様は私の事は嫌いなようだ。

 まあ現在、保護されている以上、逆らう事は出来ないから仕方ないか。

 私はお父様が差し出した黒い石を受け取ると、お母様が部屋に入ってきた。

 お母様は、私が手に持っている黒い石を見たとたんに顔色を変えた。


「貴方! 何をティアにやらせようとしているのですか?」

 普段、温厚なお母様とは思えないほど怒りを含んだ声でお父様に怒鳴った。


「少し黙っていなさい。ティア、自分の体内からではなく大気中から魔力が集まる事を考えて、鉱石を魔力で覆ってみなさい」

 私はお父様の言葉に頷くと、目を閉じる。

 さっきは、自分の中のモノを呼び水として魔法を使おうとした。

 今度は、大気中の魔力を直接収束させるイメージを行う。

 大気中の粒子が、分子や原子が収束していくイメージを頭の中に描きだす。


「――ま、まさか!?」

 お父様の驚いた声が聞こえてきたので、私は驚いて目を開けて手元見る。

 すると……。大気中の魔力が鉱石に収束していき白く光輝く石に変化した。

 お父様は私が作りだした石を、私から取り上げて見ている。


「――これは、間違いない。白色魔宝石だ」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る