第351話
「出会ってどうしたの?」
リネラスやイノンにセレンが俺を疑った目で見てくる。
「……何も無かったと思う――きっと……たぶん……」
「どうして曖昧なの?」
「ユウマさんは、リンスタットさんと、そのあとどうしたんですか?」
「お兄ちゃん最低なの! 覚えてないなんて最低なの!」
俺の言葉にユリカを除く3人が突っ込みを入れてくるが、どうして俺がここまで突っ込みを受けないといけないのか意味が分からん。
だんだんとイライラしてきたところで。
「まってください! 大体の事情は呑み込めました!」
そこには全ての謎は解けたばかりのユリカが俺を指さして「やっぱり犯人んはユウマさんでした!」と言ってくるが、いいかげん俺のせいにばかりするのはやめてほしいも
「――で、俺が犯人という証拠はどこにあるんだ?」
「ふふふっ――それはですね! ユウマさんがエルフに触れると発情して抱き着いてくるという点にあるんです!」
あまりにもドヤ顔で「どうですか?」と問いかけてくるユリカがいつもと違ってちょっとうっとおしい。
正直、いつものおとなしいユリカの方が俺としては好みなわけだが……。
「いや、それだけだと俺が悪いとか分からないだろ?」
俺の言葉を聞いたユリカが「ふうー……。ユウマさんは何も分かってませんね!」と肩を竦めながら俺に語りかけてくる。
そんなユリカの様子に少し苛立ちながら「何が分かってないんだ?」と俺は問いかけると。
「ユウマさんは、エルフ達の宴に誘われたんですよね?」
「誘われたが?」
「その時に、怪しげな料理を出されませんでしたか?」
「ふむ……」
怪しい飲み物ね……。
ぶっちゃけ、エルフ達の宴に出てきた料理は、どれもが天然の持つ深い苦みを堪能できる葉物ばかりで、飲み物も微妙で怪しいものばかりだった。
「全部怪しかったな……」
「ユウマさんって……」
ユリカが呆れた顔で俺を見てくる。
「お、おい! 俺に料理の種類を期待するほうが間違ってるぞ? だいたいエルフの料理なんて分からないからな!」
「はぁ……わかりました」
ユリカはため息をつくと、俺の首付近を嗅ぐと「やっぱり!」と、呟いた後に俺から離れる。
「えっとですね! ユウマさんはエルフが発情するサキュバルフルーツを食べています!」
「ええー……そんなモノをユウマは食べちゃたの? というか宴で出されたの?」
リネラスが驚いた表情で俺を見てくる。
俺はリネラスの言葉を聞きながら、心の中でサキュバルフルーツって何だよ! と突っ込みを入れた。
サキュバスって知らないのに、サキュバルフルーツとか意味が分からないんだが……。
「つまり、そのサキュバルフルーツを俺が食べたことで、エルフ達が情熱的に迫ってくるようになったと……」
「はい! ユウマさんから腐ったフルーツの匂いがしたので!」
「おい! もう少し言い方! 言い方があるだろ!」
――っていうか、腐ったフルーツの匂いでエルフは発情するのかよ……。
本当、どんな性癖を、エルフガーデンのエルフは持っているのか、突っ込みどころ満載すぎるだろ。
「なるほど――つまり、俺の体臭が原因で回りのエルフが発情していたと……」
俺の言葉にユリカは、「はい!」と肯定してくる。
しかし、俺の体臭が原因とか言われると、「ユウマさんって臭いですよね!」と言われてるみたいで結構、心にくるものがあるんだが……。
とりあえず次回から、エルフの宴にはなるべく参加しないようにするか。
「それで、どのくらいで治るものなんだ?」
「わかりません!」
ユリカがドヤ顔でキッパリと言い切ってくる。
「植物マスターのお前でも分からないのか?」
「はい、以前にサキュバルフルーツを食べた男は、体臭を変化させてエルフを誘うと書かれた本を読んだ事があるので」
「なるほど……って!?」
身体中に悪寒が走る。
とっさに【探索】の魔法を発動。
周囲に俺の生体電流を利用した広域の生体音波結界が展開され……。
「おい、これはやばいぞ!」
「どうしたんですか? ユウマさん?」
イノンが首を傾げながら俺をみて来るが――。
俺はイノンの顔を見ながら「エルフが……」と呟く。
すると、ユリカが「エルフがどうか――あっ!?」と大きな声で叫ぶ。
俺はユリカの言葉に頷く。
「数十人ものエルフが、俺たちの【移動式冒険者ギルド宿屋】に向かってきている」
「え? ええー……」
イノンとユリカとセレンは、同時に声を上げた。
そう、俺が宴で出会ったエルフとエルフガーデンですれ違ったエルフ達がまっすぐに俺たちへと向かってきていたのだ。
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