第292話

 一人考えこんでいると、銀色の髪に赤い眼の肌の白いとても綺麗な女性が私に話しかけてきた。

 私より5歳から6歳くらい年上?

 私がジッと見ていると。

 

「アルバさん、この子が?」


 女性はお父さんの名前を呼んでいた。

 お父さんは私の頭の上に手をおくと。


「ジョゼフィーヌさん、うちの娘をリネラスをよろしく頼みます」

「ええ、わかりました」


 お父さんは私の頭を何度も撫でてくると回り込んでしゃがんでから私と同じ目線になると。


「リネラス、お前にこれを渡しておこう。もし、私に何かがあった場合にはこれを使うんだぞ?」

「何かって何?」


 お父さんが何を言ってるのか分からない。

 でも、その何かはきっと私が望まない物だと思う。

 私がお父さんから受け取ったのは一枚の白紙の冒険者ギルドカードと金色の鍵。


「何もなければいいんだが……」


 お父さんは意味深な独り言をつぶやいたあとに立ちあがると。


「ジョゼフィーヌさん、カンナさん……娘を……リネラスをカレイドスコープまでよろしくお願いします」

「大丈夫ですわ! アルトリア商会は、どんな時でも誠実を旨としていますから!」


 お父さんは何度も、ジョゼフィーヌさんという女性に私の事を頼むと私の方へ近づいてきた。

 そしてしゃがむと私を強く抱きしめてきた。


「リネラス……冒険者ギルドの職員試験に受かれば、会うのは6年後になる。怪我や病気をしないようして変な物を食べないように、しっかりとがんばるんだぞ?」

「うん! 大丈夫! 私、きっと合格して戻ってきてお父さんと一緒にフィンデイカ村の冒険者ギルドを大きくして、エルフガーデンのおじいちゃんの冒険者ギルドを再建するから! そしたらお父さんとお母さんとみんなで一緒に暮らすの!」


 私の話を聞いていたお父さんは、私の頭を撫でると。


「待っているからな、気をつけていってくるんだぞ? 無理をするんじゃないぞ?」


 私はお父さんの言葉に頷いてアルトリア商会の帆馬車に乗り込んだ。

 そして、出立の鐘が鳴らされて私は、フィンデイカ村を出て海の港町カレイドスコープに向けて一週間かかる旅に出た。




 【海の港町カレイドスコープ】についた私は、ギルド職員の試験に合格してユゼウ王国内の王城が存在する【中央都市エルダート】の冒険者ギルドの職員養成学校へ入学する事が出来た。


「リネラス! 市場に買い物でもいかない?」

「ごめんなさい」


 私は、【中央都市エルダート】で一緒に冒険者ギルドの職員として勉強をしている学友に市場で小物などを見にいかない? と誘われたけど断った。

 

「止めておきなさいよ、あの子は入学してから一度も妖精学校から出たことがないんだから」

「そうなの?」

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