第227話
途中まで話しかけたところでリネラスは後ろを振り返る。
そこには、まな板リネラスとは相反するように、豊かな胸を強調するように腕を組んでいるイノンが立っていた。
「……い、一体……一体いつから……いつから見ていたの!?」
イノンは、ニコリと動揺しているリネラスに微笑む。
リネラスには、イノンの表情は余裕の表れだと理解出来てしまう。
「いつからですか?えっと……「ふふっ……ユウマもまだまだ甘いわね。私が何度も自分の身を危険に晒してまでカレイドスコープの町に買い物に行っていたのは、今! 目の前に! 存在するエターナルフィーリングを花屋で発注していからなのよ!」と言う所からです」
「最初からじゃないの!」
「はい。ユウマさんは気がついていないみたいでしたけど、私もセレンもセイレスも一目で【エターナルフィーリング】の株だと気がつきましたから……」
「……」
リネラスは、無言で立ちつくす。
「ユウマさんに言ったらどんな顔するでしょうね?【エターナルフィーリング】を、リネラスさんが店員さんと共謀して買わせたって知ったら……そしてその特性が浮気発見と知られたら大変ですよね?」
「くっ!?」
リネラスは苦虫を噛みしめたような表情を、さらには額に青筋まで浮かんでいる。
「……な、何が望みなの?」
リネラスは冷や汗をかきながらイノンに語りかける。
イノンは、リネラスの視線を受けながらしばらく考えた後――。
「そうですね、明日の【エターナルフィーリング】への水やりは私達にやらせてもらえませんか?」
イノンがそう言うと、セイレスが姿を現し黒板をリネラスに渡す。
そこには、「私もユウマさんが浮気しないかチェックしたいです!」と書かれていた。
「ま、まさか――!? セイレスも!?」
リネラスに問いかけられたセイレスは顔を真っ赤に染めてから俯いて頷いている。
そして黒板に文字を書いてリネラスに見せる。
そこには、「私を大事にしてくれたから……」と書かれている。
リネラスは思わず自分の額に手を当てた。
まさか、男日照りと言われていたセイレスが……こんなに簡単にユウマを好きになるとは予想外であった。
これで言葉が話せていたら強力なライバルになっているところだ。
黒板だから、まだ感情をそこまで表現出来てないのだから。
エルフは一度、相手を好きになったら突き進んで男を手に入れろーという風習が昔からある。
リネラス自身、一応エルフではあったが……生粋のエルフであるセイレスとはまた違っている。
セイレスの覚悟に。思わず大声を上げそうになる所でリネラスは言葉を飲み込んだ。
そして考える。
【エターナルフィーリング】は、一株一人まで主人契約が出来るという不思議な生態系を持っている。
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