第167話
さすがに俺やリネラスに喧嘩を売ってきた奴を助けるつもりは起きないし、関わったら関わったで、また面倒事に巻き込まれそうだからな。
まぁ何も言わないとイノンも納得しないだろう。
ここは例えを出して、理解を得るとするか。
「イノン、良く聞いてくれ。助けるか助けないかで言うなら俺は彼らを助けるつもりは無い!」
「ど、どうしてですか?」
「それはな……捨て猫や捨て犬だけに関わらず動物に餌をやると言う事は最後まで面倒を見る――つまり最後まで責任を持つと言う事になるわけだ。だからこそ、ああいう奴を俺は助けたくない」
「そ、そうなんですか?」
「ああ! 俺がイノンに嘘を言った事があったか?」
俺の言葉にイノンがうろたえながら、ワイバーンに追われている帆馬車を見て俺を見てを繰り返している。
そして両手を胸の前でグッと握ると。
「わ……わかりました。ユウマさんの事ですから深い考えがあるんですよね……」
「ああ、俺が私怨でムカつくからという短慮な思考で人助けをしないなんて、そんな事がある訳がないからな」
「さすがユウマさんです!」
「まあな!」
イノンが俺の事を尊敬な眼差しで見上げてくる。
しかし……まぁ、そこまで純真な目で俺を見られると心が痛むな。
それからしばらく、俺達は帆馬車がワイバーンに追われる様子を見ながらお茶を嗜んでいるとリネラスが立ちあがった。
「ユウマ! 良い事を思いついたわ!」
「なんだ?」
そろそろ昼寝でもしようと思っていたのだが、何か思いついたのだろうか?
「私思ったの! ここから海の港町カレイドスコープまでは一週間の距離があるでしょう?」
「ああ、あるな……お前とイノンが言った事が正しいならだけど」
「だからね! 徒歩だと大変だから交渉して助けてやるから馬車を寄こせというのはどう思う?」
リネラスの提案に俺は、ハッ!とする。
「さすがはリネラスだな」
「当たり前です! 相手の弱みにつけ込んで交渉をして如何にして成功報酬を増やすかは冒険者ギルドでは新人時代に叩きこまれる常識なんです!」
「お、おう」
そんな常識知りたくなかった。
おかしいな?リネラスに会ったばかりの時は、人のため!とか聞いた気がするんだが……。
リネラスは俺に力説した後、宿屋から出ていく。
そして俺とイノンはカウンター席に座りながらリネラスの交渉を見守る事にした。
「えー、こちら移動式冒険者ギルドですが依頼を受け付けていますよー。今なら何とSランク冒険者があなたを追って食べようとしているワイバーンを倒してくれます!」
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