第159話
「貴方達は自分の息子が何をしてきたのか存じていないのですか?」
ウカル様の私達を見る目がとても冷めている。
「この村の井戸の事は知ってらっしゃいますよね?」
ウカル様の言葉に妻が頷く。
たしかアース神教の秘術で作られたと噂で聞いたが……。
「あれを作ったのは、ユウマ君です、管理を教会に委任したに過ぎません」
「浴場もユウマ君が作りました。これも教会が管理を任されてるだけです」
私や妻の反応を見て、ウカル様がため息をついてきた。
「貴方達は、自分の子供がどれだけ村に貢献しているのか理解してないのですね。娘さんのアリアさんのスライムを維持してるのはユウマ君から供給された魔力ですよ?それに表に出てください」
私や妻は家の外に出ると、遠くに巨大な白い教会が建っていた。
「あれを作ったのもユウマ君です。あの教会には対魔結界が組み込まれています」
私は驚いた。
対魔結界は、組み入れるのがとても難しく杖1本に組み込むだけで金貨1000枚はかかるという代物だ。
冒険者時代に一度見た事があったが、とても高くて手が出せない代物であった。
「さらに言いますが、ユウマ君が居なくなった事でこの地の力が急速に失われつつあります。この意味がお分かりですよね?元冒険者の方なのですから……」
「つまり近いうちに魔物が攻めてくるということをですか?」
「ええ、そうなりますね。そうすればユウマ君が作った壁が役に立つかも知れません。ですが、本当に貴方達は息子さんの事を何も知らなかったのですね?もしかして教会で子供達に勉強を教えてる事も知りませんでしたか?近年人口が増えている村の食料を支えるためにつねに森で危険を冒しながら狩りをしていたことも知りませんでしたか?」
次々と、ウカル様は息子ユウマが何をしてきたのかを説明してくる。
「貴方達は一度でもユウマ君を褒めてあげた事がありましたか?それ以前に自分の子供が何をしていたのか見てないとは……親失格ですね。妹さんが言ってましたよ?お父さんもお母さんもお兄ちゃんにはあまり構っていないと」
……たしかにそうなのかも知れない。
だが言って貰わなければ分からないではないか?
「バルガスさんにフィーナさん、恐らくユウマ君が居なくなった事でこの村は大変なことになるでしょう」
そんな!?ユウマのせいで私達は村から……。
「バルガスさん、貴方は今なんて考えたんですか?自分が息子のせいで酷い目に会うかもしれないと考えましたか?」
「……」
「ユウマ君が、村を出て行った理由が分かった気がします。貴方達二人はもう少し人の親として自覚を持ってユウマ君に接するべきでした。遅かれ早かれ彼は巡礼の旅に出ていたのですから。
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