第131話

「信じられないわ……開店休業中ってどういうことなのよ!ユウマもそう思うでしょう?」


 リネラスが俺にしな垂れかかってくるがどうしたものか?


「リネラス、飲みすぎだぞ?」


 俺はリネラスに声をかけるが『うるひゃいー』と聞く耳をもたない。

 飲食店が閉まっているのは、マリウスが攻めて来て奴隷狩りをしていたからだ。

 少し考えれば分かる事であった。

 殺される可能性があるのにリネラスのように店を開くような根性があるような奴ばかりではないのだ。


 当然、村一番の高級食堂は閉まっていた。


 リネラスは3年ぶりのまともな飯にありつけると思っていただけに荒れに荒れた。

 もうこいつ捨ててきていいかなって思うくらい面倒だった。


 唯一救われた点と言えば、マリウスを俺が殺して軍を撤退させた事で、村の危機が救われた事と俺は了承してないが凄腕の攻撃魔法師冒険者が町を守っていると言うことで祭りになって食料とワインが配られてる事くらいだろう。


「……ユウマさん」


 名前を呼ばれた方へ視線を向けると、そこにはイノンさんが立っていた。

 顔色はとても悪く今にも倒れそうだ。


「……あの、お約束のご飯とお風呂と寝床が用意できました」

 

 ふむ……。

 用意してくれたなら行くか。


「それじゃリネラス、家まできちんと帰るんだぞ!」

 

 リネラスもいい大人だ。

 自分の事は自分で対応しないとな。

 酒も俺が勧めた訳じゃないんだし放置しておこう。


「だめぇえええ」


 服の裾をリネラスが掴みながら俺にしがみついてきた。


「おい!放せ!くっそが、なんて力だ!」

 【身体強化】の魔法を使っているのにまったく剥がれる様子がない。

 こいつ実は強いんじゃないか?


「ユウマさん、大丈夫です。うちは宿屋をしていますからベッドは余っていますので」

 

 俺は溜息をつきながら、イノンの言葉に甘える事にした。


「わかった」


 俺はリネラスにしがみ付かれたまま、イノンさんが経営する宿屋に向かった。

 宿屋は冒険者ギルドから徒歩1分の所で、外見は白い壁に赤い屋根がありアーチ型の小窓が可愛らしさを演出している。

 客室も外見から見るだけで30室近くあるのではないだろうか?宿屋に入りイノンが用意してくれた部屋に入るとリネラスをベッドに寝かせた。

 宿屋は静まり返った静寂とリネラスの寝びきしか聞こえてこない。


「なかなか、いい雰囲気の宿屋だな?」


 シックな所が落ち着いていいと思う。


「はい、お母さんとお父さんが昨日まで手入れをしていましたから……」

「そうか……」


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