第125話

 瞬殺の殺し屋ガルムが小さく呟くとそれにラグルドとヴァルドが頷く。

 この戦乱の時代、力が弱い者が殺されて何が悪いのか。

 力が弱い者が殺され奪われるのは当たり前。

 それが分かってない愚民が多すぎる。

 自分達は、最強の元Sランク冒険者であり、エルンペイア王やネレイド公爵家の後ろ盾もある。


 国の指示に従わない冒険者ギルド。

 巨大な組織であったがもはや我々の敵ではない。

 逆らう者は皆殺し、そして女子供は奴隷として売り飛ばす。

 

 先代の国王の時には出来なかった!力こそが正義!それがエルンペイア王の治世なら行う事が出来る。

 むしろそれは推奨すらされている。


「あとは、ユリーシャ姫を始末すれば面白おかしく暮らせるな」


 男達が笑いかけたところで、軽い何かが割れる音がする。

 男達は慌てて自分達の指を見た。

 すると指に嵌まっていた3つの指輪の内、一つ粉々に砕けた。

 赤い血の宝石がついた指輪は砂となって消えていく。


「おい、これは……」


 怪力無双のラグルドは、指輪が砕けたのを見て魔法師殺しのヴァルドへ視線を向ける。


「これはマリウスが殺されたな……」


 魔術師殺しのヴァルドは信じられない表情で語る。

 マリウスはつねに全力で相手を仕留める。

 どんなに相手が弱くとも過剰と思われる戦力を投入し禍根を残さず女子供までも必要なら殺す。

 そのマリウスが殺されるとは想像もつかない。

 ユリーシャ派にそれだけの力があるとも思えない。 


「ふん。所詮、やつは我らが四魔将の中では最弱。策略だけで、のし上がった奴に過ぎない。」

「た、たしかに……なら我らに抵抗する事がどれだけ無駄かを分からせる必要があるな?」


 ガムルの言葉を肯定的に捉えたラグルドは好戦的な笑みを浮かべながら話す。

 マリウスが殺された事それは即ちそれだけ強い奴がいると言う事だろう。

 なら熊ですら絞め殺す力を持つ俺様が行かなくてどうするのか?


「ひさしぶりに骨のある奴と戦えそうだな」


 瞬殺の殺し屋ガルムが席を立つとランプの光が揺れる。

 

「おい、ガルムさんよ? 俺の獲物だぜ?俺の豪腕で圧死させてやるよ。お前はネイレド公爵様の警護でもしていた方がいいんじゃないのか?」

「ふん、貴様のような筋肉と一緒にするな。殺しには美学が必要だ、すぐに殺したらつまらないだろう? 少しづつ肉をそぎ落とし恐怖というスパイスと絶叫と言う戦慄を奏でてこそ美学と言える」


 自己に陶酔するように揚々と語るガルムを見ながらヴァルドも話に加わる。


「マリウスは300人近い兵隊を常に連れていたはずだ。ユリーシャ姫派でない可能性を考えるなら相手は少数精鋭の可能性が高い。もしかしたら本部ギルドの高ランク冒険者チームかもしれない。ここは一度、隠蔽の特技を持つこの私が見てきた方がいいだろう。それと魔法師であったのなら始末しておこう」


 ヴァルドの言葉に、ラグルドもガルムも一理あると頷く。

 気配遮断の特技を持ち、相手が使う魔法陣を瞬時に解析し発動するよりも前に自分の魔法を完成させカウンターとして返し、相手を殺す技量を持つネレイド公爵領Sランク冒険者であり最強の魔法師殺しの異名すら持つ男ヴァルド。

 その異名は伊達ではなく、今まで99人の魔法師を殺してきた実績もある。


「私には簡単な仕事だと思うがちょうどキリがいいからな。悪いが私に今回は譲ってもらうぞ?丁度100人目の生贄が欲しかった所だ」


「ちっ! 仕方ねーな。そいつをどうやって殺したくらいは報告しろよ? あとマリウスの野郎が奴隷狩りに向かっていた村、フェンディカって言ったな? 国内の反抗勢力の見せしめとして皆殺し決定だぞ?」


 ラグルドの言葉に……。

 

「ふん。たかが人口1500人程度の村だろ?断る必要すらない。力の弱い奴は淘汰されて当然だ」

「分かっているさ、子供以外は全員皆殺しにして魔法の実験にも使わせてもらう」

 

 ―――さあ、狩りの時間だ! 

  



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