第86話

 最近の俺の一日の日課は、朝に水を魔法で出して瓶に入れた後に家の周りの草むしりをして村の道を魔法で少しずつ整備した後に山で狩りをしてから教会建築の仕事をしている。


「最近の俺、すごく働いている気がする」

 俺は、教会の建物の仕上げをしつつ一人呟きながら考える。

 どうも最近、皆からの俺の扱いが酷いように思えてならない。

 ここは、少し俺の価値観を高めるべきではないだろうか?

 幸い、俺にはたくさんの知識がある。

 それを使えば、一躍村の人気者になる事も造作もないはずだ。


 もしかしたらリリナを除外した村の女性陣も、俺を見直して少しはやさしくしてくれるかもしれない。

 ふむ、そう考えると悪くはない。

 いや……妙案だとも言える。


 今までどうしてこんな簡単な事に気がつかなかったのか不思議でならない。

 そう考えると……教会建築より最優先と言えるな……。

 

 俺は教会に古代モルタルが入ったバケツと母親からもらったお弁当を置くと、町の外れに向かう。

 歩きながらどうしたらいいか考える。

 基本的に中世より文明力が劣っているこの世界において、体が汚れた時には、夏場は水で体を拭く。

 そして寒い時は、温めた湯で体を拭く。

 だからアライ村には、お風呂が一つも存在しないというか、そういう慣習がない。

 そこで冬がやってくる時期にお風呂があったとしたら?

 冬場に体を温めてくれる風呂があれば、村の皆がリラックスできるだろう。

 さらには俺の好感度もうなぎのぼりにあがるだろう。


「よし。お風呂を作ろう」

 そうすると、まずは排水設備を考えないといけないな。

 排水設備となると、垢とか腐った物を処理する必要がある。

 俺の知識の中にある浄水設備だと微生物などを利用しているはずだけど、この世界で浄化設備を考えるとなると……微生物なんて作ってバイオハザードとか起きたらまずいからな……。

 そうなると、それっぽい魔物を見つけるしかないか……。


 ふむ。

 とりあえず出来ない事は、後回しにするか。

 そうするとまず作るのは風呂釜とお湯だが……魔法で持続的に風呂釜内の湯を温めるのは魔力消費的に問題あるからな……。

 一回は、ウラヌス十字軍は撤退したが、またこないとも限らないし。

 その時に魔力が無かったら危険だからなあ。

 そうすると……温泉を掘り当てた方が……。


 ああ、いいことを思いつた。

 温泉を掘り当てるより、温泉を作った方がずっと楽だな……。

 たしか、温泉は地下水がマグマによって熱せられた物のはずだ。

 なら地殻の構成を組み替えてマグマの流れを作り出した方がいいな。

 

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