第71話
ヤンクルさんに石灰岩がある場所を聞いた翌日、俺はその場所へ来ていた。
そこは村からほとんど離れておらず魔物や野生の動物もめったに出ないらしい。
周囲は切り立った崖で土が露出している。
雨の日だったら崩れてくる可能性があるかも知れないが最近は晴れの日ばかりだったので大丈夫だろう。
俺は周囲に転がっている5センチから10センチ程の石灰岩を拾い集めていく。
日が暮れるまで石灰岩を集めていたが家の台所の床の全てをセメントで覆う量を確保するにはかなりの日数がかかりそうだ。
俺は持てるだけの量を持ってその日は家に帰った。
そして翌日からはお昼まで家の周辺の草むしりや、畑にときたま生える草を刈ったりしてから川に行かずに石灰岩が取れる場所まで往復する毎日を送った。
朝になり瞼を擦りながら起きると『今日は雨が降りそうだな』と親父の話が聞こえてきた。
俺は玄関まで歩いていき外を見る。
すると外は暗く空は黒い雲に覆われていた。
あと2回行けば必要な石灰岩の量が確保出来たかも知れないのに本当に残念だ。
まあ、急ぐ必要もないだろう。
雨が降ったら石灰岩が転がっている場所は危険だからな。
もし崖が崩れてきたら助からないと思うし。
いくら町から近いと言っても生き埋めになったら助からないだろう。
そうしているうちに雨が降り始めた、
「いかなくて良かった」
一人呟きながら俺は今日一日、家の中で過ごす事に決めた。
部屋の中でゴロゴロして時間を潰していると、家の戸口を叩く音が聞こえてきた。
親父は畑の様子を見にいくと出かけて、母親は料理をしているから自然と俺が対応することになる。
俺は、台所に降りてから戸口を空ける。
するとそこにはヤンクルさんが立っていた。
「ユウマ君か、丁度よかった。娘のリリナは遊びに来ていないか?」
俺は首を傾げる。
リリナが遊びにきた事なんて一度もない。
「……いえ、来ていませんけど?」
「そうか、やっぱり……」
「どうかしたんですか?」
「実は、娘は人見知りで感情を表に出すのが苦手な子なんだ。友達になりたいのに素直になれずに拳で語ろうとするんだ。だから友達がずっといなかったんだ」
「そうなんですか」
感情を表に出すのが苦手とか嘘だろ?俺とかめっちゃ被害者なんだけど。
謝って損したまで言われたんだけど?そりゃ友達できないわ。
だいたい拳で語るとかどこかの熱血主人公かと……。
「それで、娘が私や妻に心配をかけまいとユウマ君の家に遊びに行っていると言っていたんだ。普通なら信じないけどユウマ君と約束したからもしかしたらと安心していたら……」
あーなるほど。
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