第59話
今はまだエメラダ様に、何があったのかハッキリとは分からない。
違う。人の気持ちなんて人生なんてそんなに簡単に理解できるものじゃない。
簡単に分かりあえるものじゃない。
そんなのは俺の中にある知識が教えてくれているじゃないか?
でも、だからこそ……力になれるんじゃないのか?
だからこそ、俺は……。
「わかりました。エメラダ様、俺がかならずエメラダ様のコンプレックスを解消してあげます」
俺の言葉にエメラダ様は、目から涙をぽろぽろと零し始めた。
「……はい、よろしくお願いします」
きっと一人で大変だったのだろう。
自分で銀色の髪を老婆のような白髪というくらいだからな。
この世界ではたぶん先天的なメラニン欠乏の遺伝子疾患であるアルビノは理解されていないのだろうな。
ここは村民としてそして知人としてエメラダ様に自信を取り戻させてあげたい。
こんなに綺麗な女性なのだから、自信さえ持てば多くの男性から好かれるはずだ。
「ユウマ君!」
俺がエメラダ様と話しをしていると、ヤンクルさんが近づいてきた。
「ユウマ君、探したよ。今のところはウラヌス十字軍に動きは見られないね。そろそろ交代お願いしてもいいかな?」
「あ、そうですね。すいません、何か何時間も見張りをやらせてしまって」
俺はヤンクルさんに謝罪する。
「それでは俺は北に向かいますので、エメラダ様もご一緒に行きませんか?少しお話したい事もありますので」
「そうだな、私も貴様に話したい事があるから一緒に向かおう」
話し方が突然変わったので振り返るとエメラダ様はフルフェイスのナイトバイザーを装着していた。
さっき村の中では脱ぐような事を言っていたのは何だったのだろうか?
まぁすぐにコンプレックスを解消出来たら訳ないからな。
「わかりました。ヤンクルさん、こちらはエメラダ・フォン・イルスーカ様です。この村の視察に来られたそうです」
「ユウマ君、それはよかった。それじゃすぐに対策を取らないといけないね」
俺はヤンクルさんの言葉に頷く。
ここの領土を治めるイルスーカ侯爵のご息女で騎士をしている人なら的確な指示と戦略をもらえるはずだ。
そうすれば、ウラヌス十字軍に手を出すことも可能になるはず。
いままでは防戦一方だったこともあり、俺もそこそこストレスが溜まっていたりする。
俺は今後の事も考えてヤンクルさんを交えて3人で話をしようと思ったがヤンクルさんの表情を見てそれは難しいと判断した。
《探索》の魔法で、横になりながら簡単にウラヌス十字軍の動向を判断する事が出来る俺と違って、ヤンクルさんは魔法が使えない。
ヤンクルさんは五感をフルに使ってウラヌス十字軍の動きを観察してないといけないため、疲労の蓄積速度は俺の比でない。
ヤンクルさんの顔色を見ただけでかなり疲れているのは一目でわかる。
これは、朝に向けて休んでもらっておいたほうがいいだろう。
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