第58話
「えっと実はですね。村の中までそんなフルフェイスのナイトバイザーを装着してるのは息苦しいのではないかと思いまして。せっかく綺麗な髪や愛くるしい顔に美しい瞳をしているのですから隠すのは勿体ないなと……「貴様……」……」
やばい、お世辞だったつもりが『貴様』呼ばわりされるほど、怒らせてしまったようだ。
その証拠に全身を震わせて怒っていらっしゃる。
「―――ユウマ!」
「はいいいい」
エメラダの大声に俺は直立不動の構えを取る。
殴られるくらいないいけど、斬られるのは痛いからやだなと思いながらすぐに回復魔法を使えるように心構えをする。
「ユウマさんは、じゃなくてユウマ!貴様はこの私の老婆のような白い髪や吸血鬼のような赤い瞳が皆から忌み嫌われていると知って尚そのように言ってくるのか!?」
何を言っているのだろうか?
アルビノなんてとても綺麗じゃないか?
すこしこの人もリリナと同じく自分自身を卑下しすぎじゃないのか?
まあ人間だれしもコンプレックスがあるし、エメラダ様の機嫌を取っておけば後で俺の待遇も良くはなるかも知れないからヨイショしておくか。
「エメラダ様!」
俺は膝をついてから上を見上げる。
フルフェイスに隠れていてエメラダ様のご尊顔を拝謁する事はできないが、それはいいとしておこう。
「―――な、なんですじゃなくてなんだ?」
やはりコンプレックスを曝け出した事で、エメラダ様は動揺しているようだ。
俺だって自分のコンプレックスを知られたらと思うと仕方ないと思う。
そのくらい秘密を他人に知られるのは、とても辛いモノなのだ。
だから俺は、エメラダ様の辛さが完全に分かるとは言えないが少しは共感が出来る。
「俺は、エメラダ様の銀色の髪はとても美しいと思います。月明かりに照らされて輝くその色はまるで月の女神だと思いました。そして、赤い瞳も俺には宝石のルビーを思い浮かばせるほど綺麗だと思います。それにエメラダ様はとても女性的ですばらしいお方だと思っております。ですからそのような無粋な兜など、ここでは着けてほしくは無いと俺は思いました」
「……」
反応がない。
すこし褒めすぎたのだろうか?
それとも、兜を脱げといった言葉に怒ったのだろうか?
もしかしたら、騎士の誇りを汚したな!この下郎が!とかバッサリと逝かされたりして?
「あ、すいません。調子にのり……「わかった。たしかに村にいるのに兜をつけておくのは無粋なのかもしれないな」……」
「――あ、はい」
途中で話を切られてしまったが、エメラダ様は納得してくれたようだ。
やはり侯爵家のご息女になると度量が違う。
エメラダ様は、俺が見ている前で兜を外すと俺をまっすぐに見つめてきた。
「ユウマさん……責任は、とってくださいね?」
やはり、エメラダ様は兜を外すと女性らしさを見せてきてくれる。
エメラダ様が何を言っているのか俺には、よく分からない。
ただ、コンプレックスがあるのは分かった。
彼女のコンプレックスが解消されるなら、手伝いくらいお安いものだ。
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