第29話

 さてどうしたものか……。

 一応、魔物が攻めて来ていると言う事にしているが、こちらから打てる手立てがほぼ無いのが困る。

 この世界の国同士の国交状況が、新聞やネットなどが無いために分からないのだ。

 そのため、どうやって立ち回って良いのかが分からない。

 下手してこちらから手を出して、向こうから戦争の口実を作られたら困る。

 それに今から防衛しようとしているアライ村の領主であるイルスーカ侯爵軍かイルスーカ公爵領が存在しているアルネ王国が守ってくれるのかすら分からない。

 最悪、戦争の口実を作ったからと切り捨てられる可能性もある。

そうなると、村ごと独立するか?という話になるが、この世界の国や組織の背景が分からない事からそれも難しい。

 そうすると、俺の有用性をイルスーカ侯爵へ見せつけた上で手を出させない方向で話を持っていくしか無い。

 でもそうすると、今までみたいに隠れて魔法を使っている訳にもいかない。

逃げるという選択肢もあるが、ずっと守れるかと言えば守れないと思う。

 中世世界だと仮定すると、村民は財産と思われている可能性がある。

 そうするとその財産を取り戻すよりも貴族や王族は、プライドを優先にして追いかけてくる可能性が高い。

 それもなりふり構わずだ。


「どうしたものか」


 俺は溜息をつく。

 どちらにしても、防衛するにしても相手が何を目的に動いているのか調べる必要がある。

 俺が立ちあがると――。


「ユウマ君」


――ヤンクルさんに話しかけられた。

振り返ってヤンクルさんを見ると話しを続けてきた。


「一応、村の皆には君の父親から話しをしてもらっているよ」


 俺はヤンクルさんの言葉に頷く。

 まあ、ヤンクルさんが親父といるよりも、親父だけの方が村の皆に受け入れやすいだろう。

 ヤンクルさんもアライ村に来てからそんなに時間は立ってないからな。

 とりあえず情報収集だけ先にするか。


「ヤンクルさん、とりあえず捕縛したウラヌス十字軍の連中から、この村を攻めてきた理由を聞きだしましょう」


 俺の言葉にヤンクルさんは頷いてきた。


「そうだね。でもどうやって口を割らせるつもりなんだい?」


 ヤンクルさんの言葉に俺は足元に転がっている拳と同じくらいの石を拾い上げる。

 それを見たヤンクルさんは首を傾げていた。 

 俺は、束縛状態で地面に転がされているウラヌス十字軍の兵士に近づく。

 彼らの身柄は、砂鉄を集めて作った鎖で封じている。

 年配の兵士の元へ歩いていき……。


「ちょっといいですか?この中で一番偉い人を教えてもらえますか?」


 俺の言葉に周囲の視線が一人の男に一瞬だけ集まる。


「――知らん!」

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