第12話

 俺はそれだけ言うと村の周囲を意識する。

 そして上空から周囲を見渡すように意識しながら《探索》魔法を発動させる。


「”探索”」


 発動した魔法は、村だけではなく周囲の森や山の中まで魔法の波動が吹き抜けていく。

 そしてすぐに自分の頭の中に周辺の地図が表示される。

 その地図の中、森深くに一人の人間がいるのを確認した。

 光点が緑という事もあり、これは村人だろう。

 それとその緑色の光点に近づく赤い光点が確認できる。

 どうやら、何らかの魔物もしくは動物にターゲットにされてる可能性がある。

 

 俺はすぐに立ち上がる。

 そしてヤンクルさんへ視線を向けて言葉をかける。


「ヤンクルさん、奥さん……ユニイさんが危険です。すぐに助けに向かいますので失礼します」


 俺の言葉にヤンクルさんは立ち上がろうとしたが、完全に回復したとは言えしばらく動かしていなかったのだ。すぐに動かせるようになるのは無理だ。

 

「ユウマ君!」


 リリナが俺へ何故か熱い視線を向けてきている。

 きっと父親の回復と、母親が危険だという事に頭が追いつかずどうしたらいいのか分からないのだろう。

 俺は、リリナの頭の上に手を載せて撫でる。


「あとは任せて。俺が君と君の家族を守るから……だから安心して待って居てくれればいいから」


 すぐに俺は、草履を履くと家から出た。

そして《肉体強化》魔法を発動させる。

 魔法が発動すると同時に体中の細胞が活性化していくのが手に取るように分かる。

 俺は、探索の魔法により頭の中で表示された位置へ向けて移動を開始した。


 ヤンクルさんの家は村の外れにあり森へも近い。

 魔法を使っても誰にも見られる事はない。

 すぐに森の中へ入り枝を蹴りながら高速で移動していく。

 村からかなりの距離に存在していた光点へ近づくとそこには、リリナを大人にしたような美しい女性が4メートルはある巨大熊に襲われていた。

 

 高速で移動したままの速度で草鞋を鋼鉄に変化させる。

 そしてそのまま熊の頭を蹴りつける。

 肉体強化魔法で強化された蹴りで巨大熊の頭が砕け散った。

 周囲に巨大熊の血が舞う。

 俺は溜息を吐きながらその場に着地すると舞った血から逃れるようにリリナの母親であるユニイさんの体を掴んでその場から飛びのいた。


「大丈夫でしたか?」


 俺はユニイさんに言葉をかけたが、どうやら巨大熊に殺されかけた事で失神していた。

 

 4メートル近くある熊の死体と、失神しているユニイさんを見て村まで戻るのは大変そうだと俺は溜息をついた。



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