第11話

 でも俺は、神父が使った回復魔法を見た事で世界には魔法と呼ばれるものが存在していることを知った。

 だから俺は毎日、どうやれば魔法が発動するかを研究した。

 そして、一ヶ月が経過した頃に俺は魔法の発動する方法を見つけた。

 人に対して使うのは初めてだが……。


 俺は骨折しているヤンクルさんの右足に手を添える。


「ヤンクルさん、弟子になる条件と等価交換という事で、今からする事は絶対に秘密にしてください」


 ただでさえ、勧誘がうるさいのだ。大人に知られると面倒になる事は目に見えている。


「――秘密?どういうことだ?」


 俺の質問に疑問で返してくるのを聞きながら俺はもう一度、言葉を発する。


「約束してください。これからする事は絶対に秘密にしてください。それはリリナにも言えます。もし守って頂けるのでしたら、森での狩猟を俺が手伝う事を約束しますし、皆さんが村から追い出される事もないと思います。どうしますか?」


 幼馴染の親御さんには、こういった話はしたくないが極力、自分の力は隠しておきたい。

 まぁ助ける時点でいつかは漏れる事になると思うが成人まで時間が稼げればいい。

 だから頷いてくれれば俺としては楽だし、全員が助かる道でもある。


「私は、誰にも言わないよ!」


 リリナがまず賛同してくれた。

 村から追い出されなくなるという言葉に、心が動かされたのだろう。


「わかった。一切他言しない事を誓おう」


 ヤンクルさんも俺の提案を受け入れざるを得ないと理解していたのか承諾してくれた。


「ありがとうございます。それでは――」


 組み上げるのは事象にして万能。

 積み上げるのは記憶にして再生。

 頭の中で細胞が分裂し神経、骨、筋肉、血管、皮膚が再生し接合していく光景を思い浮かべる。

 これは、地球では誰もが習う高校までの人体の形であり縫合。

 そして必要になる魔法発動媒体の鍵は漢字を頭の中でくみ上げる事。


 《肉体再生》の魔法を発動させる。

 俺が発動させた魔法はヤンクルさんの足の骨を正しく接合していく。神経、筋肉、血管、皮膚を含めた全体の肉体の修復と再生を行う。

 それはアライ村の教会にいる司祭ウカルの回復魔法とは隔絶したもの。


 極光の白い光がヤンクルさんの体を包み込み霧散する。

 すると、そこには怪我一つない健康体となったヤンクルさんが居た。


「……え?……あ?……え?……」


 ヤンクルさんは、今起きたことを理解出来ていないのか自分の体を何度も見ている。

 リリナも突然の出来事に驚いて言葉を発する事が出来ないようであった。


「それでは、ヤンクルさん。契約はきちんと守ってください」

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