R 妖刀ムラサマ
妖刀。それは様々な理由で呪われた刀のことだ。
例えば人を切りすぎた結果、その血とともに怨念がこびりついたもの。
例えば初めから呪いとともに作られたもの。
例えば曰くによって逸話が盛られたもの。
そしてそういった妖刀は往々にして切った相手と、持ち主に厄災をもたらす。
今回はその妖刀が出てきた話だ。
機神が運営
どうも派閥同士でしばきあいが発生しているようなのだ。
あのゲームは完全に物理法則を再現しており、そのうえ魔法技術も完全に再現されている。
プレイヤーが使えるスキルは原則魔法の自動化による上乗せであり、魔法が使える人間であればスキルなしに魔法が使えるのだ。
そして、ゲームであるために死んでもいくらでもやり直せる。
つまり、どんな危険な魔法実験を実行できるのだ。
そういった実験を行っているチームは複数あり、組織の構成員もまた例外ではない。
むしろ積極的に有効利用していると言えよう。
それらは当然派閥ごとにまとまっており……、険悪なムードから殴り合いに発展しているのだ。
めちゃくちゃ良くない機運である。
というかゲーム内での研究成果の横奪まで発生している模様。
モラルはないのか。
社会不安として顕在化しなければいいが、最大で内戦までありうる連中がこうも険悪になっているのは困るな……。
だからといって直接的にできることもあまりないのだが。
はー。
まあおいておいて。
今日の分のガチャを回そう。
R・妖刀ムラサマ
出現したのは日本刀……日本刀か? これ? 日本刀のようなものだった。
赤くて凝った鞘に入れられた刀剣で、鍔は円形のものではなく、十字状のものがつけられていてどうにも日本刀っぽくない。
イメージの問題だろうか。
それにムラサマて。
昔のゲームの有名な誤植の一つではあるが、まともな刀につける名前ではない。
そんなどこかトンチキ日本の雰囲気を漂わせている刀だが、冠は妖刀である。
つまりはまあ、危険な武器なのだ。
思い浮かべた動作をなんでもかんでも再現したり、握った人物を操ったりしたりする。
なので細心の注意を払いながら引き抜いたのだが。
スパン。
と。
軽い音を立てながら、引き抜いた鞘が切断された。
引き抜いただけで触れていた鞘がその切れ味に負けたのだ。
ギリギリ、指の内側に線上の切り傷ができるだけで済んだのは不幸中の幸いだろうか。
これぐらいならすぐ治るが……。
刀としてもあまりにも切れ味が鋭すぎる。
軽くレンガに刃を押し当てて見たところ、ほとんど重さだけの力にも関わらずバターでも切るかのような感覚で切れていく。
刀を支えてるだけでレンガに沈み込んでいくのだ。
というか軽く持ち上げるだけでの振ったような音が……。
もしかして空気の層を切り裂いて真空でも作ってる?
だとすれば危ないなんてもんじゃないが……。
後日。兄は空間を切ることに成功した。
妖刀ムラサマはただただ切れ味がいいだけの刀であり、切れ味が鋭すぎるために持ち手を簡単に傷つける、そういう代物だ。
だが兄はなんというか、それを全力で振るったのだ。
結果、その鋭さは空間にすら作用し、真っ二つにした。
兄の実験で空間はもうズタボロよ!
魔法でわりと手軽に修復できるからいいものを……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます