R 竹刀
竹刀。剣道などで使われる修練用の道具だ。
刀剣を模して作られた木刀は、修練に使うにしても重量があり、素振りなどでは問題ないが試合などでは負傷を引き起こす。
その問題を解決するために作られたのが竹刀である。
竹を組みわせて作られた竹刀は勢いよく叩きつけても激しい音が出るだけで負傷を引き起こすほどではない。
ただし取り扱いを間違えるとそれなりに強度がある棒なので危険ではある。
今回はその竹刀が出てきた話だ。
今ならガチャ筺体を動かせるのではないかと思った。
魔法を身に着け、最高の才能を獲得し、特殊なクラスも習得した。
人を超越した能力を得た今の私なら動かせるのではないか、と。
まあ結論から言うと。
ピクリとも動かなかった。
使いたくもなかった消滅魔法をぶつけても削ることすら出来なかった。
影で包み込んで空間を切断隔離しても動かせなかった。
超怪力で物を押す念動力の魔法でも動かなかった。
それだけ凶悪な威力の魔法をぶつけても欠けすらしないガチャ筺体の異常な強度にもうんざりする。
表面が汚れすらしないのだ。
しかも超存在と化した兄ですら、未だにその目で見ることも、触れることも出来ない。
私が兄の手をとって押し付けることだけはできるのだが、それだけだ。
兄が手を動かそうとすればその時点ですり抜ける。
相変わらず……これは。
なんなんだよ!
はー。
音立て始めたからガチャ回そ。
R・竹刀
出現したのは竹刀だった。
一般的な竹を組み合わせた作りのもので、特にカーボンとか金属とかが使われている様子はない。
ただ手に持つとやたらずっしりとしている。
私が非力で竹刀が全体的にそうなのか、この竹刀が特別重いのかは判断がつかないが……。
とりあえず振ってみるか。
その重量感の割に軽く振るえる。
腕の延長線として使える、剣の理想のような手応えだと言えよう。
なので楽しくなって思いっきり振ってしまった。
アニメの派手な剣技を真似するように、勢い良く。
竹刀の先端から斬撃が生じて、遠くにあった木材を切断した。
かまいたちのような鋭い風のようなものが飛んだのだ。
木材は達人の振るう剣を振り下ろしたかのように見事な断面を晒している。
……ええー……。
竹刀って怪我しないように作られたものじゃねえの……?
それをこう……武器として使えるようにして……。
ただの暗器じゃん!
後日。兄が竹刀をおもちゃにしていた。
斬撃が飛ぶという、漫画やアニメぐらいでしか見ない代物に兄はテンションを上げ……いやこれまで斬撃を飛ばす手段は別にいくらでもあっただろうが、竹刀だけで出せるから楽しくなってしまったようだ。
兄が全力で振り回すたびに周囲に撒き散らされる斬撃。
間違いなく近づくと怪我をする状況である。
兄が落ち着くまで押さえつけることも出来ない。
バカ兄ィ!
危険物扱ってる自覚を持てー!
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