R 竜牙の首飾り

 竜の牙。それは名の通り、ドラゴンから取られた牙のことである。

 ファンタジーでは特別な意味を持ち、魔術の触媒として利用される事が多い。

 特に、その竜牙から作り出される人造の兵士である竜牙兵ドラゴントゥースウォーリアーは、魔術師が即席の軍隊として利用する事ができるため需要が高いのだ。


 今回はその竜の牙で出来た首飾りが出てきた話だ。








 兄は叩きのめした怪物――再誕者リバースというらしい――を機神に解析、改造ちりょうしている。

 大体の概要は機神に伝えてあるので実物が欲しくなったのだろう。

 気持ちはわかるが、怪物を素手で叩きのめすのも、元人間をほとんど拉致同然に連れてくるのも、どちらもやめていただきたい。


 しかし怪物になった時点で、元の人間だった体は分離して突然死した死体として残るそうなので、誘拐扱いにはならない……いや詭弁だとは思う。

 とはいえ、ほっとくと暴れて組織――七界統率機構という名だ――討伐されるだけではある。


 ちゃっかり機神がハッキングで盗み出した唯魂術式ユニークコードと比較することによってわかったことだが、この怪物の体は……魂が具現化したもので構成されている。

 だからハチャメチャに強いし、物理攻撃が殆ど効かない。

 そして見た目からは予想できない固有能力も持つ。


 兄は……多分その能力を食らって解析しようと思って持って帰ってきたつもりだったんだろうけれども。

 その辺大体調べ終わってるんだよなぁ。

 というか、再誕者リバースはアホほど物理耐性高いんだけどなんで素手で叩きのめしたのこの人。


 はあ……まあ細かい情報は機神の調査に任せるとして。

 私は今日の分のガチャを回そう。


 R・竜牙の首飾り


 出現したのは、牙の首飾りだった。

 一揃い鋭い牙が並んだ、野蛮な印象を受けるネックレスだ。

 首からかけると、首の周りに牙が並ぶ攻撃的な見た目となるだろう。


 で……。

 この牙、なにやら魔法を帯びている。

 一般人が見ても、なにやら魔力が帯びているような気がするぐらい濃密なヤツだ。

 ちょっと適正があるやつなら色付きの靄が見えるだろうと思えるほど。


 竜の牙……かぁ。

 となると。

 牙の一つを引っ張るとポコっと根本から外れる。

 というか引っ張ると外れるように作られている。


 やっぱあれだよなぁ。

 私はそう思いながら、その牙を地面に向かって放り投げた。


 突如、投げられた地面からボコボコと湧いて出る鎧をまとった骸骨。


 なんというか……驚きもない……。

 竜牙兵ドラゴントゥースウォーリアーである。

 その身にまとう鎧も骨で出来ていることを除けば、創作フィクションで見かける骸骨の戦士そのもの。


 ふ、普通のマジックアイテムだ!

 しかも、抜いた端から首飾りの牙が再生している……。

 いくらでも骸骨戦士が呼べてしまう。


 い、いらない!

 すでに間に合ってます!






 後日。兄が畑に竜の牙を植えていた。

 もう色々植えては改造を繰り返した結果、魔境と化している畑であるが、そこに植えられた牙は……すぐには竜牙兵ドラゴントゥースウォーリアーにはならなかった。

 植物のように骨の繊維を伸ばし、まるで木のように生育し……その先に、人型の実を成らせるというだいぶ奇怪な生態にへと変貌したのだ。


 ど、土壌まで魔境化している……。

 植えられている植物がヤバいとかそういう範囲で収まっていない。


 ついでと言わんばかりに、ヒヒイロカネと竜の牙を一緒に植えた時にはもはやなんというか。

 全身ヒヒイロカネで出来た竜牙兵ドラゴントゥースウォーリアーが生えてくるんだもんなぁ。

 この畑は化け物育成用か。


 なお、竜牙兵ドラゴントゥースウォーリアーの戦闘力は牙を投げた人物の魔力依存のようで。

 兄が微妙に悔しがっていた。

 ああなると……もう強化合成で最強の化け物を作る流れなんだよなぁ。

 困る。


 もうサメ機巧天使シャークマシンエンジェルがいるでしょ!

 我慢しなさい!

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