SSR クラスシステム

 クラス。今回はゲームにおける役割を職業になぞらえて分配したものである。

 前衛で攻撃を受け止め、味方を守るものを戦士や騎士。

 後衛から高火力で敵を薙ぎ払う者を魔法使い。

 傷ついた味方を癒やし治療する者を僧侶。

 そういった形で割り振り、そのクラスに見合った能力を与える。

 そういったゲームシステムだ。

 所有するクラスによってキャラクターの表現が容易なため様々なRPGに実装されている。


 今回はそのシステムが出てきてしまった話である。







 VRゲームで兄の監修したダンジョンが数日前に開放された。

 期間限定のイベントとして開放され、踏破者にはユニークな装備が与えられるとあってか参加者はだいぶ多い。

 各地に複数の期間限定ダンジョンとして出現しているため、プレイヤー同士のブッキングなどが起こらないようになっていて無駄に凝っている。


 で、現在のその踏破者というと……。

 0である。

 全くのゼロ。

 なんならトッププレイヤーでもダンジョンの半分も進んでいない。


 理由は極めて簡単で……兄の悪辣なるダンジョンマスターっぷりによって、難攻不落と化しているためだ。

 基本的に層ごとに要素を反転して、前の層で対処に使用した装備やスキルに対してメタを張るという、嫌がらせもいいところな階層構成。

 数で攻略しようとするのなら分断を、ソロで攻略しようとするなら数を要求するというクリアさせる気があるのかと言わんばかりの要素ばかりである。


 評判は……ボスドロップが美味しいが踏破させる気がない、これエンドコンテンツを実験的に実装しているだけでは……、時間が無限に吸われる、階層ごとの踏破報酬が沼、など。

 なぜか好意的だ。

 なんで?


 まあ評判がいいならいいか……。

 ガチャ回そう。


 SSR・クラスシステム


 出現したのは巨大な水晶塊だった。

 陽光を受けて薄く虹色に光るその石は山の中に埋まっていた塊を無理やり引きずり出してきたと感じるほどに大きくいびつだった。

 何よりも不可思議なのは、その水晶の中に紋章が浮かんでいることだ。


 なんとなく見たことがあるというか、才能の卵に与えられた紋章に似ているような気がする。

 あの卵が最大まで育つとこうなるのかなぁ、という感じだ。


 で……しかもこの塊がクラスシステム?

 クラスシステムってなんだ。

 ゲームか?


 とにもかくにも、調べてみないとわからないので触れてみると。

 ポーンと空中にゲームか何かのウインドウのようなものが開く。

 そこには私の名前と、空欄になっているクラスがあった。


 私はそっとそのウインドウに触れてみる。

 すると追加のウインドウが開き……そこには。

 「獲得可能なクラス一覧」が載っていた。


 ん……んんんん?

 戦士……僧侶……魔法使い……、変なところだと魔導相談役マギコンサルタントだとか。

 いや、うん……。


 これやっぱゲームのアレだろ!?

 なんで出てくるんだよ!

 世界がまた一つ狂うだろ!


 しかもさあ……これさぁ……。

 クラスクリスタルじゃなくてクラスなんだよな……。


 絶対まだなんかある……困る……。





 後日。兄がクリスタルの一部を砕いた。

 いつもの直感が囁いた結果である。

 なお砕かれたクリスタルは、砕かれた端からまるで細胞が増殖するかのように再生。

 ある種生物的な治り方をしたのが気持ち悪い。


 で……問題はだ。

 この砕いたクリスタルである。

 この砕いた側にも紋章が浮かび上がっているのだ。


 う、うーん。

 これはシステム……システムなのか……。

 水晶はシステムをばらまくための端末でしか無いようである。

 あるいはネットワーク的なやつかもしれんが。


 紋章が浮かんでいるってことは当然触ればクラスを獲得できるわけで。

 砕けば増殖するのは……つまり普及させるための特性である。


 なお兄のクラスリストにはサメ指揮官があったことは書いておこう。

 サメ指揮官とは一体……。

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