R 発光体

 発光体。太陽や炎など自ら光を放つものを指す言葉である。

 電球なども発光体だ。

 人は発光するものを使って夜の闇と戦ってきた。

 それはより多くの時間を得ることに繋がり、更にはそれは人の文明を大きく広げるに至る。

 明るいということは人にとって重要なことなのだ。


 今回はその発光体が出てきた話だ。








 ニュースで反宇宙エレベーターデモの特集をやっていた。

 なんでも国会議事堂の前に集まってデモをやったそうで、微妙な人数集まっている映像が流れている。


 そのデモは政府に彼らとの国交を結ぶことを批判したり、宇宙エレベーターを攻撃して破壊しろという割と凶暴な発言やら、サメ機巧天使シャークマシンエンジェルを差別するような発言を繰り返している。

 侵略宇宙人だったらどうするんだとか荒唐無稽な発言まで取り上げられている。

 その行動に共通しているように見えるのは、恐怖だ。


 わからないから怖い。

 得体が知れないから怖い。

 ……人間じゃないから怖い。


 まあ、気持ちはわかる。

 完全に日常を引き裂く一筋の矢のようなものだ。

 人類を遥かに超える機神の頭脳から生み出されたもの、ダンジョンから生み出されたもの、サメ機巧天使シャークマシンエンジェルたち、そして宇宙エレベーターそのもの。

 その全てが日常を塗り替えて作り変えてしまう存在だ。


 ぶっちゃけガチャから段階を踏んでなかったら私もあっち側だった気がする。

 デモに参加するとかはなくても、漠然とした不安として抱えて……抱えて……。


 漠然とした不安は今も抱えたままだな。

 だって私室の真ん中に未だにガチャ居座ってるし。

 機神への扉を言い訳に私の部屋は実質廊下と化しているし。


 うーん、やっぱろくでもないなあのガチャ!

 なんで私のところに出現したんだ。


 ……はー。

 もう異音立ててるし今日の分のガチャを回そう。


 R・発光体


 出現したのは……うお、まぶしっ!!

 なにか懐中電灯並に光っている小さななにかが出現した。

 その小さくて丸いものがものっすごい勢いで光っているため直視が出来ない。


 思わず布巾をかぶせる。

 大きさはビー玉ほどのようで、布巾の下から光を放って自身の存在を主張しているようだ。


 えっと……なんだこれ。

 またこの世のものではないものが出てきたぞ。

 現代技術で再現できなさそうな景品はやめてほしい。

 あとよくわからない代物も。

 判断に困るので。


 手で触った感じもビー玉みたいで、ついでにガラスのような素材でできているように感じる。

 また熱もない。

 すごくひんやりしている。


 ランプの先などにつけてシェードをつければおしゃれで便利なルームランプになりそうだが……。

 まあ作れたところで一点物とか、微妙な感じだ。

 それが私好みのデザインに仕上げられるかどうかにはかなり疑問である。


 というかこんなもの組み込んだ物、欲しいか?

 電源が切れないランプとか欠陥も良いところだ。


 それにしたって材料……材料かこれ?

 ピンポイントに役に立たなさそうな代物が出てくるとは。


 また倉庫の肥やしだよ!






 後日。兄が発光体を砕いてそれを材料に発光するガラスを作り出した。

 そのガラスは透明でありながらそれ自体が蛍光灯のように光を放っている。


 ええー!?

 即座に砕く判断をする兄はどうかしている。

 どんな用途がわからないものでもどうしてももったいないという気持ちが湧くはずだが。

 まして一点物。

 壊しても惜しくないはずが……。


 いや、惜しくはないか。

 失敗したら失敗したで、ゴミが増えるだけではある。


 でもガラスに混ぜれば新しい素材を作れるってなんで閃くのか。

 前例か。

 前例のせいか。

 前例があるからって何しても良いわけじゃないぞ。


 ヒヒイロカネもそんな使わないのに山のように量産しやがってよ!

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