R 家

 家。人が居住するために利用する建物のことだ。

 最も最初に出現したであろう建物であるため、その形状は地域によって非常に多様性が富む。

 環境に適合するために、一見どのような合理性を持つのかわからない構造のものが誕生していたりするのだ。

 また、新素材や新建築方法などで新しい姿の家が生まれることもある。


 今回はその家が出てきた話だ。






 うおお、日本の海上自衛隊と海上保安庁はメチャクチャ忙しそうにしている。

 宇宙エレベーターのある場所が日本の排他的経済水域なため、実はサメ機巧天使シャークマシンエンジェルの国には海上での警察権がなかったりするのだ。


 というのも割譲するにしても、権利関係の話をするにしても、めんどくさい交渉がいっぱい必要で、それには時間がかかる。

 なので初手から日本におまかせしてしまったのだ。

 交渉は機神が続けているが、今は海上のことは全面的に預ける形になっている。


 要は縄張りを荒らされたくないというアレだ。

 あとから来た輩にでかい面されたくないというメンツの話でもある。


 なのでまー、人……というかサメ機巧天使シャークマシンエンジェルだけ貸してうちではノータッチ、の形にしたのだ。

 なお、宇宙エレベーター基部で行った犯罪は締め上げた上、立入禁止にしてその国に突き返している。


 ばれないと思ってるのか周辺で密猟とか密輸取引とかすごいんだよね!

 確かに大事が起こっていて、結構混乱している場所ではあるが。


 なので、兄のエセ国家のせいで海上保安庁は大忙しである。

 海の治安のために頑張ってほしい。

 

 さて、ガチャでも回そう。


 R・家


 出現したのは家……ではなく、小さな家のジオラマだった。

 庭付き一戸建ての立派な家である。

 赤い屋根の建造物で、中身まで作り込まれていてタンスやらテーブルやらが覗き込んだ窓から見えている。


 ジオラマ……?

 中に入っているものはどれもこれも、本当に縮尺を縮めて配置したかのように異常なほどのクオリティを持っている。

 外壁の汚れ方なんかも、新築数ヶ月目です、とありありと主張しているように見える。


 どうなってんだ……?

 そう思って玄関に当たる部分に置かれた置物を手に取ろうとしたその時だった。

 私の体が、ジオラマの中に吸い込まれた。


 吸い込まれる際にジオラマと同じ縮尺まで縮んでしまったらしい。

 ジオラマの家だったものが、今の私の視界には一般的な家と同じ大きさに見える。

 そして、その背景にはいつものテラスが超巨大に見えるのだ。


 うーむ。

 入り込める家の模型、ってことかな……?

 家の壁は木製で出来ているようにみえるし、地面は土が盛られている。

 もともとあった家の縮尺を縮めてジオラマに入れただけのようにも見えなくない。


 家の中も、ジオラマで再現されたものというよりも、普通の家を縮めただけだと思える。

 ジオラマならばこんな目の細かい布をカーテンやベッドには使えないだろう。

 制作できるかも怪しい。


 ……というか戻れるだろうかこれ。

 そう思って玄関の先にある門から出たら普通に元の大きさに戻った。


 家……。

 家かぁ。


 これを家として扱うのは無理がない……?






 後日。兄が、家に持ち込んだ物を置き去りにして、それを外側からピンセットで取り出す、という方法で物品を圧縮する方法を見つけ出していた。

 持ち込んだものは何であれジオラマサイズまで小さくなる。

 それを逆手に取って……という感じだろうか。


 なお、ジオラマサイズに小さくする利点は特にない。

 衝撃を与えるとすぐ元の大きさに戻るのもあって、ただただ危険になるだけだ。


 なので兄は、岩などを掴んだ状態で持ち込んで小さくして……投げる。

 投げつけた衝撃で元の大きさに戻るからそれをぶつける!

 みたいな使い方を試していた。


 ……。

 なんでこの人、すぐ武器にしようとするの!?

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