R おみくじサイコロ

 サイコロ。最も普及した乱数発生器であり、ランダムな数値が必要な遊びに利用される道具だ。

 複数の面からなる立方体に数字を振り、それを投げて転がすことによって向いた面に書かれた数値を得る事ができる。

 その関係上、思いつく限りの面数のサイコロが存在している。

 100面ダイスとか。

 実際面数が多くなればなるほど、球に近づくため、投げた後止まらなくなるから実用性は低くなる。


 今回はそのサイコロが出てきた話だ。









 兄が、ゲームを作っていた。

 機神に命じて自動生成させているだけだが、確かにゲームを作っていた。

 よりによってVRの。


 前に出たVRヘッドギアを解析して人が使えるVR装置を作り出した兄は次に思ったのが「普及させたいな」だった。

 正直やめて欲しい。

 人類にはまだ早い。


 機神が抱えるやべえ知識は無数にあるが、最終的に開示するつもりとしても順序というものがある。

 それを理解して技術として利用できるようにならなければ意味がない。

 機神が物を与えるだけではそれを阻害してしまう。


 というかまだ輸出契約も全然整ってないのにもう売るものの事考えてるのこの人。

 しかもVR用のゲームまで作ってさぁ。

 あまり凝っていないシステムとはいえ、オンラインFPSをもう遊べるレベルに仕上げているの、機神の演算能力どれだけ傾けてんの!?


 あと機神がこういう高性能な物を作って売るとそれだけで市場を寡占状態にしてしまうリスクが高すぎる。

 数十世代は先の技術で物を作れるので、スマートフォンを生産させればCPUの性能が10万倍とか普通に有り得る。

 そうなると、他所の技術開発が進まなくなってその分野の技術が完全に死ぬ。


 そういう意味でも売りに出さないで欲しい……。

 機神が人類文明に食い込みすぎるのはだいぶ危険である。

 何かあったときに責任のとりようが本当にないんだから!


 はー、なんで人類文明に神視点で関わるようなことになっているのか。

 やめやめ、ガチャを回そ。


 R・おみくじダイス


 出現したのはサイコロだった。

 6面の白いプラスチックに、それぞれ「大吉」「中吉」「小吉」「凶」「大凶」「最強」と書かれている。

 ……最強?


 サイコロの面にそれぞれおみくじの結果を書くことで、おみくじの代用とした玩具的なもの、のように見える。

 見える、といったのはこれがガチャ産だということが気がかりだからだ。

 どう考えても、振ると面に相応しいなにかが起こる。


 えー。

 とりあえずこれを振って確かめないといけないわけですが。

 振りたくねえなぁああああ。

 大凶が出る可能性があるのがすでに嫌だし、最強とかいうわけのわからない出目が存在するのがもっと嫌だ。


 うううう、そい!

 サイコロは転がり、やがて止まる。

 出目にあったのは……「中吉」。

 それと同時に、ぽんと音を立てておみくじがサイコロの脇に出現した。


 白い紙の真ん中に短い文章が書かれている。

 「金運よし」、と。

 金運……。


 ……あれ。

 なんか下が……、私の部屋の扉の方が騒がしいな。

 母親がなにか私を呼んでいるような?


「お父さん宝くじあたったってー!」


 え、ええー!?













 後日。兄が静止も聞かずに振った。


 父が当てた宝くじは高額当選だった。

 なんと3桁万円。

 間違いなくあのおみくじサイコロのせいである。

 しかも、これが中吉で出てきたというとがメチャクチャに怖い。


 大吉ならどうなってしまうのか。

 逆に言えば……大凶ははっきり言ってヤバい。

 生死に関わる案件が間違いなく起こる。

 隕石が直撃して死亡とか、ありえない死に方をしてもおかしくない。


 でそんな代物を、静止したにも関わらず振りやがった。

 出た目は「最強」。


 そっかー……よりによってそれ引いちゃうか……。

 それと同時に、バラバラバラ……と大量のサイコロが空から降り始める。

 その全てがおみくじサイコロであり。

 そしてそのすべてが海中に落ちていった。


 あー……。

 なるほどねー……。

 大量のサイコロで出た幸運と不運が全部おっかぶさるわけね……。


 それが6分の1で出るの!?

 ヤバすぎるでしょ!?

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