R 夢日記

 夢日記。その日見た夢を記録する行為だ。

 夢は目覚めてからわずか数分でその記憶が抜けていく。

 これを書き留めることによってその夢を忘れぬようにする事ができる。

 書き留め、忘れないようにすることを続けることによって、やがては夢を夢だと自覚したまま見る明晰夢に入れるようになるらしい。

 また、発狂するという噂はデマである。


 今回はその夢日記が出てきた話だ。










 機械じかけの星への調査を開始した。

 こちらよりも高度な技術を持つ文明ということで下手にちょっかいをかけると大変なことになるのでは? と警戒して調査できていなかったのだが。

 地上戦艦の調査で、明らかに様子がおかしいことがわかったために調べないわけには行かなくなってしまったのだ。


 もし調査に赴いてそこの住人に出会えるならよし。

 出会えないなら……出会えるまで調査を続行する。


 そうして機械じかけの星に足を踏み入れた瞬間、兄は何かを直感した。


 

 兄はそう静かに告げる。


 は?

 地球よりも遥かに巨大なように見える星を覆い尽くす巨大構造体が、ダンジョン?

 そんなことあるのか?

 兄も氷の星をダンジョンにしているが、あれはもとからある地形を侵食したに過ぎない。


 だがこの星はモジュール化されているとはいえ、大量の資材で以て作り上げられているのだ。

 ヤバいとしか言いようがない。

 どれだけの時間がこの星に使われているのか予想もつかない。


 で、そんな星に踏み入ったのに無反応なのは余計おかしい。

 ダンジョンは一つの生き物のようなものだ。

 常にその全身に目を見張らせ、中にいるものを知ろうとする。


 だからなんらかしかアプローチがあっておかしくないはずなのだが……。

 なーんもない。

 びっくりするほど無い。


 もしかしてこの星、死んでるんじゃないかなぁ……。


 まあいいや。

 探索してればわかるでしょ多分。

 私はガチャを回してしまおう。


 R・夢日記


 出現したのは黒い大学ノートだった。

 その表紙にきったない字でゆめにっきと書かれている。


 しかも表紙を捲った先にも同様の汚い字が続いている。

 それはどうも使い方のようで……判読に時間がかかりそうな文字がぎっしり詰まっている。

 表紙の裏に。


 いやぁ……これ、名前を書くと死ぬノートみたいな……。

 そう思うと途端にそれのパロディのような気がしてきた。

 この汚い字もあの骨のような文字を日本語に落とし込んだらこうなった……みたいな。


 まあいいや。

 中身だ中身。

 表紙の裏にぎっしりと説明が書かれている以外は、白紙がずっと続いている。

 中に何かが書き込まれている様子もない。


 使い方は、というと。

 細かいルールが多く成約もややこしいが、書いた文章の内容が夢になる、というもの。


 思ったより普通だな……。

 思わせぶりな見た目の割には、パッとしない。


 強いて言うなら他人でも適応可能なとこぐらいか?









 後日。兄が使った……使ったはいいのだが。

 思いっきり禁則に触れやがった。


 中に書かれていた禁則事項に、「夢にある少女が出てくるが干渉してはいけない」とある。

 具体的に何が起こるのかわからないが、夢に共通の存在が出てくるとかまあ危険な都市伝説などでは鉄板のネタである。

 そしてそういうものに出てくる存在はまあ……大体ヤバい。

 いろんな手段で殺しに来る。


 で、兄はあろうことか、その少女を絞め落とした。

 絞め落とした。


 もう聞いているだけで最悪の絵面である。

 まあまあガタイのいい兄が、正体はともかく見た目は少女の存在を。

 犯罪か何かで?


 しかも、これドロップアイテム、と夢に出てくる少女の姿が宝石の中に彫られた指輪を見せられてるのはなんなの?

 私はそれにどう反応すればいいの?

 というか夢の中の存在のドロップアイテムってなに?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る