R 鑑定のメガネ
鑑定。異世界転移ものの小説では必ずと言っていいほど出てくる魔法やスキルだ。
主にアイテムの正体を暴く際や、モンスターの能力を覗き見るなどの用途に使われる。
作品によっては絶大な効果を持っており、おおよそ森羅万象の全てを暴いてしまう。
適切な道具の使い方からモンスターの弱点、なんならその能力の全てを開示してしまうことによりメタゲームが崩壊することで一方的な勝利を得る事ができるほどだ。
今回はそこまで強くない鑑定のメガネが出てきた話だ。
兄が、軍隊を設立した。
その装備がまた、邪神の軍勢か何かか? と言いたくなるような禍々しい代物ばかりであり、元が天使だというのに凶悪な見た目となっている。
うねった触手のような穂先を持つ槍を握り、龍鱗を帯びた銃を背負い、歪にねじれた鎧を身につけ、おどろおどろしい怪物が描かれた盾を持った軍隊。
それが120体構成の3部隊ほど、城の頂上、テラスの前に並んでいるのだからゾっとする。
兄がこれからやらかす事を考えて、ではなく単純に見た目からだ。
私は
元はモンスターなのだから当然ではあるが、それらがより邪悪な見た目の装備を身に着けて集団で整列していたら誰だって気圧される。
気圧されないのはそれを組織した人物ぐらいだろう。
本当に何に使うつもりなんだこれ。
そう聞くと一言「偵察」と。
兄は……一体何を想定しているんだ……。
その軍団が3方のそれぞれの方角に向かって城から飛び立っていくのを眺めながら、ガチャを回す。
眺め終わってからガチャに向き合ったのだが、今日は筐体の随分色艶がいい気がする。
何かを吸っている……?
R・鑑定のメガネ
出現したのは丸いレンズのメガネだった。
銀縁で小さなレンズを保持している。
レンズが小さいのもあって、掛けているだけでだいぶ胡散臭い見た目になるだろう。
それにレンズ越しに見える視界も狭い。
しかも枕詞に鑑定の……とついている。
ということはマジックアイテムかこれ。
レンズ越しに見た対象を鑑定して、その情報を抜き出す……とかそういう。
本当にそうならもっと早く出てきてほしかったよ……。
これまで出てきたガチャのアレやコレやの使い方を暴くのにこんな便利なものは無いだろう。
これ1つで必要な情報を好きなだけ閲覧できるわけだからな。
そう思って、私は鑑定のメガネを掛けた。
視界いっぱいに広がる「レベル:56284」の文字。
うん?
しかも、その数字は数十秒ごとに1ずつ加算され、どんどん大きくなっていっている。
それに加えて地面スレスレに辛うじて、何らかの文字情報が埋まっているのが見える。
まさか……と思って、視線を上に上げた。
そこに書いてあったのは「モンスター名:
あっ。
やっぱり鑑定の効果がダンジョンに吸われて、ダンジョンのステータス表示しか出来てない。
しかも対象の大きさに比例しているのか、その鑑定結果もバカみたいなサイズで表示されている。
そのせいで全く読めない。
ええー……。
これじゃまともに使えないじゃん!
後日。普通に実験室から出て鑑定すれば良いんじゃないかと気がついて、ガチャの景品に視線を向けたのだが。
名称以外が黒塗りになって、まともに読めない。
まともに読めたのはNランクの景品ばかりだった。
えっ、もしかして鑑定のメガネよりランクの低いものしか鑑定できない……?
兄のダンジョンに湧くモンスターなら問題なく鑑定できるあたりまともに使わせる気がまったくないと言わざるを得ない。
なお鑑定のメガネを手に入れて喜んだのは兄である。
これでまた一段階錬金術の研究が進むそうだ。
あーはいはい。
早めに鑑定のメガネのグレードアップ版をお願いします。
ガチャの景品からの研究だと永遠に出来上がらなさそうだけどな!
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