R 漆黒のコート

 コート。オーバーコートの略語であり、外套のことである。

 最も外側に着る衣服であり、多くの場合その下に服を着込むため、大きくゆったりとした作りになっている。

 衣服を覆ってしまうため冬場のおしゃれとしては大きな要素を占めているため様々なデザインのものが存在している。


 今回はそれとは全く関係なくコート剤が出てきた話だ。


























 兄は今、発掘ダンジョンを再度攻略している。

 すでに一度攻略し、マップもサメ機人シャークボーグによる巡回で作成済みである。

 それであるのになぜもう一度攻略しているのかと言えば、やはり兄のダンジョンによる侵食の補助作業だ。


 侵食に利用できるポインターがビルダーで制作出来ることは前回も言ったと思うが、このポインターを作るにはやはり現地に行く必要があるのだ。

 それにその場にそのポインターを作るだけの材料が存在するとは限らない。

 そのために材料を持ち込んでいるのだ。


 あとは発掘ダンジョン自体に存在する、発掘ダンジョンが使用しているポインターを探して破壊する作業も並行して行っている。

 これもビルダーでお手軽に壁を破壊できるようになったためである。


 つまり、だ。

 発掘ダンジョンはこれからスッカスカに破壊される。

 ……もしかして止めるべきか?

 いやまあビルダーにはセンサーもついてたから多分大丈夫だろう、多分。


 ガチャでも回そう。

 なーにーがーでーるーかーなー。

 ろくでもないモノがでなければいいが。


 R・漆黒のコート


 出現したのは、スプレー缶だった。

 エアダスターや油のスプレーのようなスプレー缶だ。


 その外面は真っ黒のフィルムが貼られており、その中身がわからないようになっている。

 というか、その黒こそが自身なのだと主張しているような気がする。

 なにせ名称が漆黒のコートなのだ。

 吹き付けたものが真っ黒に染められるようなコート剤でもおかしくはない。


 そう、おかしくはない。

 おかしくないことが、ガチャの景品としてはおかしいのだ。

 そんな普通のスプレー塗料みたいな代物だとはとても思えないのだ。


 そう思って、余っている木材に吹きかけて試してみることにする。

 振るとカラカラと音を立てるスプレー缶。

 吹出口を木材に向け、その頭を押し込んだ。


 シューと音を立てながら吹き付けられる黒い塗料。

 木材をどんどん漆黒に染めていき、その質感を変化させていく。

 どんどんと、木材に比べれば薄いものにへと。


 吹き付けきった先にあったのは、木材だったはずのもの。

 完全に形を変え、漆黒の外套コートにへと変化していた。


 ああ……。

 しょうもないダジャレじゃねーか!



























 後日。兄はヒヒイロカネの塊に、漆黒のコートを吹き付けていた。

 漆黒のコートはコーティングしたものを真っ黒な外套に変化させるコート剤であり、どうもは元のモノのままなのだ。

 布の柔らかさしなやかさと、元となった素材の強度を併せ持つ外套が出来上がるわけだ。


 最初に実験したコートも、ハサミを入れると断面が木材のままであり、ハサミの手応えも木材を強引に切っている時のそれだった。

 だが着ると普通の外套のように着れるし、着心地も外套のそれなのだ。


 そこまで言えば兄がなぜヒヒイロカネの塊にコート剤を吹き付けているかわかるだろう。

 お手軽に鎧となるものを作り出そうとするんじゃないよ!

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