R 蛇口
蛇口。ひねると水が出てくるアレである。
内側に栓が取り付けられており、それの開閉具合をつまみやレバーで調整することで液体の流量を調整するような作りになっている。
また公共施設やスーパーなど、不特定多数の人間が使用する蛇口については、衛生上の関係から赤外線センサーによって自動で水を出すものが普及している。
今回はその蛇口が出てきた話だ。
兄がシェルター内にあったディスクメディアの中身をあらためていた。
そのシェルターがどのような世界に由来するものか微妙にわからないところがあるが、娯楽は共通だろうという考えだ。
実際、ディスクメディアには映画と思しきものやゲームだと思われるものがいくつもあったのだが、問題は再生機器がわからない。
見当たらないのではなくわからないのだ。
テレビの横にそれらしきものは置いてあるのだが、どうやって電源を入れればいいのかわからない。
試行錯誤の結果、円にちょぼがついたロゴに数秒触れ続けることによってその再生機器と思しき装置を起動させることに成功したのだが、今度は映像出力がどれかわからない。
というかテレビのリモコンもない。
なんらかの操作機器があるはずなのだが、ないのだ。
もしかして思念操作とかそういうやつか、音声操作とかかもしれない。
そうなってくるとお手上げだ。
そうひとしきり悩んだあと、棚の下にリモコンが滑り込んでいたのを兄が発見。
今度は再生機器の方の操作端末を探す番だ……!
まあリモコンを探している兄を見ていてもしょうがないのでガチャを回してしまおう。
今日は何が出てくるか。
R・蛇口
出現したのは蛇口だった。
パイプに接続するためのねじ切りが存在していて、バルブに3つの突起がある一般的な銀色の蛇口だ。
一般的に見られる蛇口と全く同じ金属でできている。
……、つまり普通の蛇口が、蛇口だけで出現したのだ。
もちろんひねってみても何かが出てくるわけではない。
ねじ切りの方もなにか吸っているわけでもないようだ。
マジで普通の蛇口なのか?
覗き込んでも構造上おかしいところはない。
まあおかしいところが見て取れる景品のほうが少なかったから当てになるわけではないが。
少し考えて……気がつく。
やっぱりなにかに繋げる必要があるのでは?
そう思ってねじ切り部分をテーブルに押し付けてみた。
うにゅるん、と粘土にでも突っ込むような感触とともに、蛇口のねじ切り部分がテーブルにめり込んだ。
それと同時に……いじっていたときにバルブが緩んでいたのか、蛇口の先端からとろりとなにか得体のしれない液体が流れ始めたのだ。
うっ、この匂い……。
木酢液かなにかだ!
蛇口がテーブルを絞って液体を生成している!
後日。兄は蛇口をみかんに取り付けた。
蛇口をひねるだけで出てくるみかんジュース。
これがまた全く混ざりけがなくて美味いのだ。
結局この蛇口は接続した物体が内包する液体を蛇口の先から流れ出させる効果を持っていた。
なお吸われた側が乾燥して乾ききったり、みかんなら食べられなくなったりはしなかった。
いつまでもみずみずしいままである。
ということはおそらく複製……、ないし蛇口の先で合成して出しているようだ。
でもさあ。
そこから思いついたかのように
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