R キメラ像

 置物。熊の木彫りだとか、軒先に置いてあるガーゴイル像だとか、犬の置物だとかのアレだ。

 芸術を目的とした物や部屋を飾るための物、宗教的に意味を持ったものなど、さまざまな置物が存在する。

 その多くは材料の関係上、重量が重い。


 今回は置物が出てきた話だ。

























 発掘ダンジョンの25層は、これまでの10層ごとに存在したボス部屋のある階層と同じくボス部屋が存在した。

 10層ごとの区切りかと思っていたが、きっと元々は5層ずつに存在したのを拡張した結果、上の層だけが分厚くなってしまったというやつだろう。

 まあこれまでの層を見ても、海だったり、本当になにもない島が浮いているだけの空間だったりと人が通り抜けられるように作られていない。

 それを考えれば、層を増設してダンジョンの難易度を無理に上げる必要もないと言えばない。


 ここまでダンジョンマスターとなる人物がいることを前提とした言い分だが、どうも“いた”ことだけは間違いないらしい。

 ノーライフキングのリチャードさんが言うには、200年前に一回会ったのが最後で、それ以降一度も顔を合わせていないらしいが……。


 もう死んでる可能性もあるな。

 兄が荒らす勢いで攻略しているのに何の反応もないからな。

 どっちにしても兄は最奥にたどり着くまで探索を辞めることはなさそうだが。


 怪我しない程度にがんばってね~。

 あと私を巻き込まないでくれ。


 さて、ガチャを回して今日の分を片付けてしまおう。


 R・キメラ像


 出現したのは木彫りの像だった。

 戸棚の上に飾れる程度の、両手で抱えられるサイズの像だ。

 木彫りの熊などをイメージしてもらえれば、大きさはだいたいそれで伝わるだろう。


 そう、そういう、置物が出現したのだ。

 たとえ頭が鮭で、胴体がゴリラ、下半身が馬の謎の生き物が彫刻されているからって慌てるようなことはない。


 というか彫刻としてのクオリティが優れているせいで余計キメラであることを実感させられる。

 頭は魚のヌメッとした表面が繊細なタッチで再現されているし、胴体はふわふわの毛をイメージさせるだけの緻密な作りになっているし、下半身の馬部分も手触りが殆ど馬の毛並みそのもののように感じられる。


 でも頭は鮭だし胴体はゴリラだし、下半身は馬なんだよ!

 なんだこの彫刻!























 後日。彫刻は頭がサメ、胴体が人、下半身がムカデに変化していた。

 うわっ、気持ち悪っ。


 またこの彫刻、サメとムカデはともかく、胴体の人部分が痩せたガリガリのおっさんの物の為に、余計気持ち悪い造形になっているのだ。

 皮膚のたるみまで再現しちゃってさぁ……。

 振ったら揺れそうなぐらい出来が良いものだから余計気持ち悪いよね。


 それを見ていた兄が変に気に入って自分の部屋に飾るようになった。

 一体どこに気に入る要素が……?

 

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