R エアダスター
エアダスター。パソコンなどの水を使って清掃すると問題になりそうなものについた埃を吹き飛ばす事務用品である。
内部に圧縮された空気が充填されていて、コレを吹き出すことによって埃を吹き飛ばす作りになっている。
ただそれだけの作りなので長時間放出していると内部の空気の圧力が下がり、それに伴ってエアコンと同じ原理で温度が下がってしまうことがある。
今回はそのエアダスターが出てきた話だ。
機械じかけの星の調査を進めているが……びっくりするほど地形が代わり映えしない。
モジュール化されているため基本的に同じ建物が並んでいる……というのはいいのだが。
大体そういう建物は利用者の関係で見た目が変化していることが多い、はずなのだ。
いわゆる生活感。
玄関の脇に自転車が置かれているとか、傘を立てていた跡がシミになっているとか。
店なら看板を取り付けていた痕跡であるとか、外装を塗装していたりだとか。
そういうものがまったくない。
いや、あったが失われたと言うべきか。
なにもかもが風化して、元のモジュール建造物だけが残っている。
しかも何もかもが一様に風化した跡が残っていて、マジで何があったんだと言いたくなる状況である。
あたりに積もっている塵のようなものが関係あるのだろうか。
廃墟ならともかく。
生気が失われた都市を歩くのは血の気が引く。
恐ろしいなにかが起こったのではないか、そんな想像を巡らせてしまう。
ここと繋がっているのは危険なのでは……?
そうとすら考えてしまう。
ろくでもない場所ではないか……。
そう思っている私を他所に、兄は周辺に散らばっている塵と、残骸を回収して機神に調べるように指示を出していた。
こいつ……怖気づくとかないのか?
いや兄だしな……そりゃそうだわな……。
ちょっと調子が悪くなったところで今日のカプセルを開封。
ろくでもないものをろくでもないもので中和するのはどうかと思うが、まあてもとにあるのがこれしかないしな。
R・エアダスター
出現したのはスプレー缶だった。
エアダスターとあるから、清掃に使う窒素ガスが詰まったものだ。
パッケージには何も書かれておらず、白いビニールが貼られているだけだ。
エアダスター……。
まあろくでもないものだとは思うが。
思いの外普通である。
だって使い方が対象に向けて、ノズルを押し込むだけ。
その動作以外で効果を発揮することはなさそうである。
あるとしたら爆発するぐらいだ。
そう思って、とりあえず埃まみれになっている機材に向けてノズルを押してみた。
突如ものすごい勢い、エアダスターとは思えないほどの風速でガスが吹き出され機材に積もっていた埃を一瞬にして消し飛ばした。
そう、消し飛ばした。
吹きかけられた端から、舞い上がって消滅していったのだ。
光の塵になって。
ええー……。
機能を超強化した代物だったかー。
それにしては風量がえげつないんだが。
人に向けて使ったら人を吹っ飛ばせそうなぐらいの勢いだったんだが。
う、うーん、なんだこれ。
思いの外用途が普通だったせいで、扱いに困る。
掃除に使うぶんには普通のエアダスター使うよ!
後日。兄が機械じかけの星の調査にこのエアダスターを持ち込んだ。
建物に向かってエアダスターを吹き付けた瞬間、その表面を覆っていたであろう塵をぶちまけて消滅させたのだ。
そこにあったのは、知的生命体が生活していたであろう色合いの建物だった。
というか建造物の見た目まで変わってしまっている。
なにか塵が何もかもを覆い尽くして、画一化してしまっていたようだ。
えっ、なにそれこわ。
じゃあなにその塵。
得体が知れなさすぎる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます