R 心臓
心臓。生物の中心に位置し、全身に血液を送り出す内臓である。
筋肉の塊であり、入ってきた血液を筋力で圧力をかけることで押し出す構造となっている。
生命の源と言ってもいい器官であり、それが故に古代では人の魂が宿る部分だと考えられてきた。
そのため、生贄の儀式などで取り出されて神に捧げられる、愛や慈悲の精神の象徴として扱われるなど、宗教においても重要な位置に位置づけられる。
今回はその心臓が出てきた話だ。
こ、怖い……。
兄が宝の金庫の破壊に成功した。
金貨はいつもの発掘ダンジョンから見つかるものと同じものだが、銀貨も一緒に出てきたのは初めてである。
金貨も銀貨も、鋳造で作られたであろう微妙に荒い造形に歪んだフォルムを持っている。
そういう意味では昔の通貨だろうか、という印象も浮かぶ。
宝石の類はこれがまた見事なカットのものがゴロゴロと入れられており、それにあった宝飾品に嵌められている。
惜しむらくはこれがおそらく中世とかそういう印象を受ける作りだということだろうか。
外に持ち出せば即骨董品としての評価を受けてしまう。
出自が出自なだけに、出処を言えない。
あとは……ヤバそうな武器とか、聖杯にしか見えないカップとか……。
この辺はまた今度にしよう。
先に今日のガチャを回しておこう。
R・心臓
出現した瞬間、それは自力で浮かび上がった。
宙に浮いたまま、脈動を続けている。
ドクン、ドクン、と近づかなくてもわかるほどにはっきりと音を立てているのだ。
そう、それは心臓だった。
人体から取り出されたまま、というものではなく、ある程度大雑把にデフォルメされた心臓ではある。
だが内臓は内臓だ。
それが宙に浮いて、しかも人から切り離されてなお動き続けている。
何を循環させているのかもわからない。
血管は何にもつながっておらず、そこから出るものも流れるものもなにもない。
怖い!
あまりの得体のしれなさに変な声が出そうになった。
これまで得体のしれないものはいくらでも出てきたが、今回は別格だと言わざるを得ない。
薄らぼんやりと赤い光をまとっているような気すらしてくるその赤い臓器は心拍に合わせてゆらゆらと揺れているのだ。
それがそこにある、というだけで正直なところ恐怖を覚える。
兄ぃ! なんとかして!
後日、と言わず。引いてすぐ兄を呼びつけて対処してもらった。
その際、おかしなことが起こったのだが、なんとあの兄が及び腰になったのだ。
あの命知らずな兄が、宙に浮く心臓に恐怖を覚えたのだ。
兄もそれがありえないことだと思ったようで、すぐに耳栓を持ち出して自身の耳を塞いだのだ。
いきなりそんな奇行をしたと思ったら、その直後に兄は動き出し二重にしたビニール袋に雑に心臓を入れて口を縛った。
兄曰く、見ているものに恐怖を覚えさせる音を放つ心臓、だってよ。
……。
心臓である必要が全くわからない。
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