R ポテトフライヤー

 フライドポテト。じゃがいもを揚げて塩を振っただけの簡単料理である。

 お手軽に高カロリーで油たっぷり取れるため大変人気があり、多くのハンバーガーチェーン店でサンドイッチのサイドメニューとして販売されている。

 チェーン店の味を自作するには、コーンシロップを入れてポテトの中に含まれるデンプンを入れ替える作業をすると美味しくなる……らしい。


 今回はそのポテトを揚げる装置が出てきた話だ。




















 兄が鉱石の種から育った植物から、金属を収穫していた。

 確かに金属質な植物ではあったが、枝や葉から本当に金属が取り出せるとは思わなかった。


 問題があるとすればそれを加工するだけの熱量を調達できないということだ。

 現状使える火といえばハンドバーナーぐらい。

 枝同士を溶接する程度のことはできるが、そこ止まりだ。


 ヒヒイロカネが火を必要としない金属だったためにそこまでの火力の炉を作っていないのだ。

 というか作るだけの技術力がない。

 一般の民間人に過ぎない兄がそういう技術を持ってないため、枝を集めるだけ集めて積み上げている。

 またガラクタ集めて……。


 さてガチャを回そう。

 ガラクタが増えなければいいが、大体こういうときに引くと新しいガラクタが出てくる。


 R・ポテトフライヤー


 ほらもー! 使いもしない調理器具がぁぁぁぁ!

 出現したのはご家庭にたまに置かれる家電のフライヤーだ。


 フライヤーというのはつまり、揚げ物専用の調理器具だ。

 多くの場合箱型で、中の油を一定の温度に自動で保ってくれる凄いやつだ。

 最近は卵に似た形で油を入れる部分が引き出しになっているタイプも見るようになった家電だ。

 火を直接使わず、電気で動き、蓋がついていると揚げ物による事故を回避できる凄いやつで、一時期油なしで揚げ物ができると話題になった商品も存在する。


 だいたい聞いてもらえればわかるが、一般のご家庭にはない。

 そこまで揚げ物し続けるような家庭がそんなに存在してたまるか。

 電気式な関係で一回に揚げられる量がそんなに多くないのも普及しない理由だろうか……。


 今回出てきたフライヤーだが、これはなんだろう。

 普通にフライヤーに見えるのだが、何故か頭にポテト、とついている。

 概ねポテトに関わるなにかがあるのだが、あいにく今手元はワッフル用の生地しか無い。

 ホットサンドメーカーで焼こうと思って用意したものなのだが。

 外側と中身が単一なものなら中身がすり替わることがないことがわかっているので安心してワッフルを焼ける。


 ……揚げてみるか。

 ワッフルの生地なら、ドーナツの代わりに揚げてもいいんじゃないか?

 同じようなものだ。

 どうせホットケーキミックスから作った生地だしな、これ。


 そっとコンセントに繋いだフライヤーを予熱。

 油はかなり少なめでいけそうだ。

 油が沸騰し始めたら、静かに円盤状になるようにワッフルの生地を流し込む。

 広がれ……。

 手首を使って生地を落としたほうが良かっただろうか。

 邪悪なもちもちドーナツみたいな形になってしまった。

 

 まあいいか。

 ここまで特に変化なし。

 揚げたものがフライドポテトに化けるのかと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。


 歪な形になってしまったが揚げたてのドーナツ。

 美味いはずだ。

 では実食。


 はむっ……。

 塩っ!

 はむっ……。

 じゃがいも!


 フライドポテト味になってるじゃねーか!

 ドーナツのもっちりとした食感とミスマッチすぎる!

 というかめちゃくちゃ油吸ってる!




















 後日。兄がフライドポテトを揚げていた。

 それもわざわざ台所でじゃがいもを細かく切り分けて、だ。

 バカな……そんな素直にガチャの景品を使うなんて……。 


 これならどんな下手くそでもフライドポテトを美味しく作れる?

 その使い方は思いつかなかった。

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