SR 冒険者ギルド

 ギルド。元は都市開発などに参加した商人がその都市での独占的な権益を保護するために作られた組織である。

 しかし市場における商取引のすべてを独占したために、その反発として職人達によるギルドが立ち上げられ、商人のギルドに対して対抗として市政への参加を要求するようになった。

 現代のウェブ小説においてのギルドは、MMORPGにおける大規模なチームにギルドの名前を冠されていることに由来し、主に冒険者を管理するための組織として扱われている。


 今回はその冒険者ギルドが出た話だ。

 何言ってんのか自分でもわからないが、出てきたものは仕方ない。















 発掘ダンジョン6層は廃墟の都市だ。

 都市として見れば相当に狭い部類ではあるが、ダンジョンという地下構造体の中に出現するにはあまりに広い場所である。

 それまでの上層が興味深い装飾が施されているぐらいで単調な作りであることと比べると、突然別ゲーが始まるレベルで全く別の光景が広がっているのだ。

 また、街の中央に立派……いや、かつて立派であったであろう聖堂が建てられており、街のどこへ行こうともその聖堂を見ることができる。


 ゴシック調に近いような、でもよく見ると細部が違うような気がしてくる聖堂のデザインは興味深い。

 それが間違っているのではなく、おそらくその形に文化が育っていたのだ。

 あいにく専門家ではないので詳しいことが分かるわけではないが。


 聖堂を見ていると無性に武器を振り回して壁に弾かれたり、ローリングしたい気持ちになるが、そこまで身体能力が高くないのでやると怪我する。

 いや、武器自体はそこらを調べれば手頃なのが落ちているので振り回すこと自体は簡単なのだが。


 階段移動が大変だから見て回る時間がないのがつらいところだ。


 さて、ガチャを回しておこう。


 SR・冒険者ギルド


 それを開封した瞬間、テラスの隣に3階建ての大きな会館が出現した。

 看板には私には読めない文字が書かれており、剣を組み合わせたアイコンも描かれている。

 ええー……。


 カプセルの中にかかれている文面を見る限り、これは冒険者ギルド。

 冒険者ギルド……?

 冒険者ギルド。

 小説なんかに出てくる冒険者を管理する組織。

 え?


 軽い扉を開いて見た内部の様子は酒場となにかの受付が融合して雑多な印象を受ける。

 また掲示板の形式でたくさんの依頼書が貼ってある。


 その様子は私のような学生がうろちょろしていていい場所ではない。

 ただ、妙に不自然なところもある。

 扉を開けて覗き込んでいるにもかかわらず、誰もこっちに反応しないのだ。


 いやいやいや。

 脳裏に、NPCのおっちゃんがよぎる。

 いやいやまさか、出てきている組織そのものがNPCとかそういうことは。


 意を決して踏み込んでみるが、酒盛りをしている冒険者も、受付にいる人もこちらに反応しない。

 というか、一寸もこっちを見ないのだ。


 よく見るとその酒盛りも同じ動作を繰り返しているだけ。

 やっぱこれNPCだよ!

 NPCが集団で出現してしまったよ!


 しかし、冒険者ギルドという名が表す以上、何らかの機能があるはず。

 妙にでかい建物にNPCが複数いるだけ、ではないはずだ。


 そう思って受付に近づいてみる。

 すると。


「ご依頼でしょうか!」


 声がでかい。

 しかし冒険者に対して依頼は可能なようだ。

 護衛に採取に討伐。

 代金に等しいだけの仕事を依頼すれば受けてもらえるようだ。


 しかしNPCに仕事をやらせて大丈夫なのだろうか?

 あれはおっちゃんを見ている限り、基本動作を繰り返す人形でしか無い。

 下手に依頼なんかすると死んでしまうのではなかろうか。


 まあ最も、依頼票の文字が読めないんでその依頼すら出来ないんですけどね!













 後日。兄が適当な金貨を代金に、発掘ダンジョンのマッピングを冒険者に依頼していた。

 依頼を申請すると同時に酒盛りをしていた冒険者が突然立ち上がり、その依頼票を受け取って発掘ダンジョンに向かっていった。

 壊れた操り人形みたいな動きで怖い。


 結果は傷だらけになった冒険者の姿と、6層までの地図だ。

 帰ってきた冒険者は受付で結果を渡すと、すぐに酒盛りの動作に戻った。

 そして酒盛りの動作をするたびに傷がもりもり治っていく怪奇現象を引き起こしていた。

 

 兄は自分で作った地図と照らし合わせながらその出来を確かめる。

 その精度はなんというか微妙で、兄が自分で書いたのとあんまり変わらないそうだ。

 6層前後で怪我しているあたり戦力としても微妙である。


 それならサメ機人シャークボーグにやらせたほうが優秀そうだな。

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