R ちからのたね

 RPGにはよくステータスを向上させるアイテムが出現する。

 多くのRPGでは薬や種といった摂取して効果を発揮するアイテムに割り振られているため、俗称としてドーピングアイテムとも呼ばれる。

 その効果は基本的にステータスに紐付いたアイテムを使うと、そのステータスが小さく成長するというものである。

 その性質上、一度のプレイで出てくる数が限られているのだが、ゲームによっては無数に手に入れられる手段が模索される。

 多くの場合バグを利用した複製であり、ゲームバランスを破綻させる。

 そうでなくても、ゲームバランスの関係上使ったら使ったでレベルアップ時に効果が丸め込まれて消えてしまったりすることもある。

 このため、この手のアイテムはかなり慎重な扱いをされがちだ。


 今回はそのドーピングアイテムが出てきた話だ。









 兄が自動販売機とNPCのおっさんを使って両替を行っていた。


 というのも、現状最も価値と数があるのが、湧きスポットから湧き出すモンスターのドロップする金貨なのだ。

 自動販売機が出現するまで使い道がなかったがために無駄に溜め込まれている。

 ようやくと自動販売機の出現で使い道ができたとはいえ、自動販売機のラインナップを見るに7割が地雷。

 人が飲んで大丈夫なのか怪しい物すらある。


 そこで兄は躊躇しない。

 片っ端からサメもどきに飲ませるだけに飽き足らず、どの缶ならNPCのおっさんが買取を受け付けるかを確かめていたのだ。

 結果、金貨で買える3種類のポーションをNPCのおっさんは買取することがわかった。

 飲むと爆死するポーションと、飲むと無限に悶え苦しんで死ぬポーションと、死んでようが飲ませると動き出すポーションの3種類なのだが。


 このおっさん、得体が知れなさすぎる……。

 まあこれにより大量に余っていた金貨が変換可能になったことで、兄の目標としていた物品も買えそうだ。

 この速度なら一週間後には。

 一週間後……マジか……。


 ろくなことになりそうにないXデーのことを考えていても仕方がないのでガチャを回す。

 いや、これもだいぶろくでもないんだが。


 R・ちからのたね


 出現したのは小汚い麻袋だ。この小汚いというのは、汚れているとかそういう意味ではなくめちゃくちゃ作りが甘くて汚く見える、という意味合いでの小汚いだ。

 なんというか適当に扱ってたらすぐ分解しそうである。

 中身は独特な匂いを放つ種が5つほど。


 名前からしてこの種が主となる景品なのだろうが、種か。

 食べると筋力が上がるとかそういう効果が予想できる。


 だが、これを口に含むのはだいぶ嫌悪感がある。

 なぜなら匂いがやばい上、つまんだ際の感触がぐに、とした腐っているもののそれなのだ。

 あと手についた汁が拭っても落ちない。

 

 どうしようこれ……。

 私はそっと畑の近くに埋めておいた。

 放って置いても勝手に育てるだろう。兄が。










 翌日。畑が大変なことになっていた。

 そこに突如森が出現したのだ。

 無数のちからのたねをつけたツタ状の植物が相互に絡まり合うことで巨大なまりもにも似た森を形成している。

 また畑にあった植物の一部を巻き込み、すでに交雑が行われたのか見たこともない植物がいくらか混ざっている。

 や、やべぇーー。

 力を持った種ってか。そんな勢いで成長しないでほしい。

 うっかり外に投棄していたら大変なことになっているところだった。


 その後兄が全部刈り取った。

 ツタの生えたサメもどきが歩いているのを見たが気のせいだろう、多分。

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